FENICS メルマガ Vol.33 2017/4/25

1.今月のFENICS

 新年度が始まったひと月も、終わろうとしています。新生活が始まった方々、少し落ち着かれましたでしょうか。GWの準備にお忙しい方もいらっしゃることでしょう。  来月、FENICSサロン(12巻『女も男もフィールドへ』にかかわる)が2回、信州大と神戸大にて、また6月18日には総会とFENICSイベントが東京・小金井で開かれます!!! ぜひともスケジュールにお入れください。FENICS理事・小西公大さんが2月に立ち上げた「変人人類学研究所」とFENICSがさっそく共催イベントです。
くわしくは下記、メルマガ本文をご覧ください!

#*12巻『女も男もフィールドへ』の木村大治さん、佐々木綾子さんによる新しい書評が『アジア・アフリカ地域研究』 に掲載されました。pp.191-194(https://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/dl/publications/no_1602/AA1602-03_BR.pdf
まだ12巻をお読みでない方は、ぜひ!!!!

それでは本号の目次です。

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(波佐間逸博)
3.フィールドワーカーのおすすめ(石本雄大)
4.フィールドごはん(増野亜子)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動 –
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2.私のフィールドワーク
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  • とにかく歩くドドス

波佐間逸博(第4巻『現場で育つ調査力』執筆予定・人類学/アフリカ地域研究)
身体のうちもっとも重要な部分はどこか。ウガンダの「遊牧の戦士」ドドスなら即座に「太腿」と答える。「腿がなければ歩けず、歩けないと死ぬ」からだ。牛の日帰り放牧では男がサバンナを毎日10〜15キロメートル歩く。腹一杯の牧草で満たされた母牝からミルクの分け前を人は得る。鮮烈なのは、ハイエナの群れを藪のなかに知覚し取り乱した牛たちが、先頭を闊歩する牧夫に同調して思い直し、再びのしのし歩みはじめることだ。原野のドドスと牛は心身を重ね歩く。

干ばつから家族を救うのも「歩くこと」だ。わたしの住み込み家族は2年間にわたる干ばつのため、去年8月に食糧がとうとう底をついてしまった。国境の向こう側、遊牧の民トゥルカナの友人たちが暮らすケニアの半砂漠には、難民キャンプがある関係で国際援助が入っていた。妊娠7カ月の妊婦をふくむドドスの妻たち5人の一団は、その援助物資の油とトウモロコシをトゥルカナから乞うため、ウガンダ-ケニア国境線をつくるエスカープメントを横断する旅に出た。

やがて、運びうるかぎりの「2次援助」を担ぎ、「牛は人が背後から押し上げてようやく登ることができ、ラクダは登れない」標高差1000メートルの急峻な断崖を文字どおり這いあがって戻ったとき、集落では静かな祝福と興奮が彼女たちをつつんだ。「英雄」のひとりの女が牛囲いの真ん中で男の子を腕に抱き、もうほんとうにうれしくて仕方ないといった感じで、「ドドスの女はロバよ。家族のモノを運ぶから。分かったの?」と教える姿は矜持の現れでもあった。

くだんの大きな腹を抱えた女はその夜「今日わたしたちが持って帰ってきた分は家族がすぐに食べてなくなるでしょう」と、粥を調理しながらさらっと言い、「そうしたらまた行くわ。生きるために」とつづけた。トゥルカナの友人から貰ったトウモロコシが尽きた3週間後、ドドスの女たちは東のエスカープメントを再び歩きおりていった。 2012年〜13年に、中央政府軍や家畜略奪集団との武力衝突が激化した際にも、かれらは戦禍から逃れるために郷里を離れた。南スーダン国境地帯の狭隘な枯れ谷沿いに常に「歩いて」キャンプを移動させ、家畜と家族を守ったのだった。一日で数十キロを歩く家畜キャンプの移動は半時間あれば支度は済む。朝、全員で木柵を選別して引き抜き、搾乳・撹拌のためのミルク容器、敷皮などと一緒にロバの脇腹にくくりつけ、出発する。身ひとつで歩く生活様式はいまなおアフリカ遊牧民の原像である。

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3.フィールドワーカーのおすすめ
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  • 石本雄大(地域研究、生態人類学、第11巻著者)

サヘル地域に位置するブルキナファソ北東部の調査地では、日中の気温が日本の夏よりも基本的に高い。ただし、湿度が低いこともあり、木陰に入ると心地よい空気を味わうことができる。しかし、3から4月にはハルマッタンという季節風が吹くため、状況が一変する。屋内であっても、体温より暑い空気が隙間から入ってくるようになるためである。 そんな過酷な状況で、支えとなった1冊の本がある。「父の詫び状」(向田邦子)である。10数ページのエッセイが24編おさめられた本で、ある出来事をきっかけに、著者向田邦子の若かりし日の記憶が次々と蘇る、という構成になっている。

調査の合間、呼吸をするのも気だるい暑さの中、私は幾度も文庫本を開いた。ある頁では、アイスクリームの冷たい甘さが舌に伝わった。別の頁では、クリスマスの町の喧騒が耳を刺激し、冷たい空気が頬を押した。

調査中は現地の環境にどっぷりと漬かるため、調査地での生活が当たり前の日常になってしまうことが多かった。そんな時この本により、ひと昔前、ある土地の雰囲気に深く浸ることで、本を閉じた時には状況を客観視することができた。

息抜きとして「父の詫び状」を読んでいたが、加えてこの読書は自分の現在地を確認する作業でもあったのであろう。もしあなたが日々の出来事に忙殺され、自分を客観視できなくなっている場合、向田邦子という第3者の思い出を追体験することで、息抜きのみならず、あなた自身の状況を冷静に見つめ直す契機となるかもしれない。

向田邦子、「父の詫び状」、文芸春秋 http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167277215

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4.フィールドごはん
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「ラワール」

増野亜子(民族音楽学 13巻『フィールドノート古今東西』執筆者)

バリ人にとって特別なご飯といったら、何をおいても絶対不動の断トツ一位はラワールだ。儀礼前の早朝(というより深夜というべき時刻)に男たちが腰にナイフを下げて集まってくる。豚を屠り、新鮮なうちに解体して、みんなでひたすら肉を刻んでミンチにし、椰子の果肉、ニンニクやウコン、唐辛子等の香辛料も徹底的に刻んで同様にミンチにする。洗面器いっぱいに積み上げられたミンチを最後に手で混ぜ合わせる。ラワールは基本的に男の料理である。 生肉が一般的だが火を通すこともあるし、生血を混ぜて赤くしたり、野菜を混ぜたり、ヴァリエーションはいろいろで、唐辛子がきいた強烈なラワールもあれば、繊細な味のラワールもある。いずれにしても白いご飯との相性は抜群である。しかし日が高くなるとすぐにいたんでしまうから、昼前には食べ終えなければならない。近所にもおすそ分けして一気に食べる。ラワールは祝祭の際に人々が集まって、わいわいと一緒に作って一緒に食べる、特別なご馳走なのである。

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5.今後のFENICSイベント
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  • 1)5月21日@信州大学 フィールドワーカーFENICSサロン@アフリカ学会

信州大学教育学部 中校舎M301講義室 http://african-conference54.info/access.html
14:30〜16:30(予定) フィールドワーカーFENICSサロン 「フィールドワーカーとライフイベント:アフリカ編」
話者1 椎野若菜(社会人類学・東京外大)
話者2 四方篝(熱帯農業生態学・京都大学)
パネルディスカッション
 網中昭世(JETROアジア経済研究所)・木村大治(生態人類学・京都大学)・椎野若菜(AA研)・四方篝(RPD、京都大学)・山極寿一(京都大学)  

  • 2)5月27日@神戸大学 フィールドワーカーFENICSサロン@日本文化人類学会

神戸大学神戸大学六甲台地区鶴甲第一キャンパス
部屋はおってお知らせします)

11:30〜13:30(予定) 話者 中川加奈子(文化人類学・ネパール/追手門学院大学)
   「子連れフィールド2回と子どもを日本に置いてのフィールド1回の経験」(仮)

対談 石井美保×椎野若菜
    子どもの成長とともにflexibleにフィールドを変える?!(仮)

*詳細は、おってお知らせします。
本サロンは学会にあわせて開催されるので、サロンのみに参加の方は学会参加登録や参加費は必要ありません。

  • 3)FENICS総会+FENICSラウンジ

日時:6月18日(日)
場所:小金井アートスポット シャトー2F
http://www.chateau2f.com/access/index.php

14:00〜15:00
 FENICS総会
15:30〜17:30
  FENICSラウンジ  「世界を変える教育:フィールド教育・アート教育・変人教育」 (FENICS×変人類学研究所×こども未来研究所×小金井アートフルアクション共同開催)

1.「義務教育におけるフィールドワーク」
    「南極兄弟」こと澤柿教伸(自然地理学・法政大学)×澤柿教淳(松本大学/小学校教諭時代、フィールドからの授業を実践)
2.「映像のフィールドワーク: 映像を観察し、手で考え身体で感じる学びの実験」
    下中菜穂(造形作家・切り紙研究)×宮下美穂(小金井アートフル・アクション)×丹羽朋子(文化人類学・人間文化研究機構)
3.「<変差値>を伸ばす、変人教育の可能性」(変人類学研究所の活動)
    小西公大(社会人類学・東京学芸大)×正木賢一(design/アート・東京学芸大)

18:00〜
 まちのカルチャーカフェ(NPO法人こども未来研究所)
    椎野若菜(社会人類学・東京外国語大学AA研)
    「子連れフィールドワーカーが見た世界の子育て」(仮)

*お子様連れOKです!その場合、念のためお子さんの年齢や人数等をご連絡ください。

そのほかのイベントに関するお問い合わせもお気軽にどうぞ。 fenicsevent@gmail.com

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6.チラ見せ!FENICS
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  • 100万人のフィールドワーカーシリーズ第5巻
  • 『災害フィールドワーク論』(木村周平・杉戸信彦・柄谷友香編)
  • 「災害が露にする「地域のかたち」:スマトラの人道支援の事例から」
  • (山本博之)

 言葉が通じても、その意図が適切に伝わるとは限らない。相手に何かをしてほしいと伝えるときはなおさらである。災害時の緊急支援のような一期一会の関係では、言葉の意図をはかるのはさらに難しくなる。  本章では、2004年12月に発生したスマトラ島沖地震・津波(インド洋津波)で約17万3000人の死者・行方不明者を出し、その後も地震・津波や火山の噴火などの災害が続くインドネシアのスマトラ島を対象に、災害発生時の緊急人道支援という角度から、災害時に現れる「地域のかたち」をどのようにとらえるかについていくつかの事例を紹介したい。それに先立ち、次節では支援における<物語>の役割について考えてみたい。

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(5巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)

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7.FENICS会員の活動
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  • 1)FENICS理事の小西公大さん、変人類学研究所を設立!!FENICSとも今後コラボしていきます!

FENICS内では宮本道人さん、椎野若菜参加。 (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000014926.html

変人類学研究所とは、偏差値ではなく「変差値」を!というモットーのもと、子供たちが持っている創造性溢れる気質を学校教育によって減退させないで伸ばしていくための方途と仕組みを考える組織です。 クリエイティブ教育とインクルーシブ教育を掛け合わせたようなことを考えています。学芸大の持つNPO「こども未来研究所(http://www.codomode.org/)」と株式会社QREATOR AGENT(http://qreatoragent.jp/との共同研究です。 今夜4/25(火)、番組「ラッピー×ブラッピー」にて登場します。 関東ではTOKYO MX 23:30-、関西では読売テレビ 25:59-放送です。放映後は、以下の公式ウェブサイトから、YouTube配信が見られます。 http://www.ytv.co.jp/rappybrappy/

  • 2)宮本道人さん分担執筆:『東日本大震災後文学論』

限界研編 飯田一史/杉田俊介/藤井義允/藤田直哉編著 海老原豊/蔓葉信博/冨塚亮平/西貝怜/宮本道人/渡邉大輔 著 南雲堂
  http://www.nanun-do.co.jp/mystery/genkai-higashinihon.html
四六判上製 640ページ 本体2,900円

「震災後」は終わっていない。いまだつづいている。
3・11がもたらした 傷、抑圧、混乱、失望
創作者は物語を用いて 希望を再稼働させる!!
3・11以降、おびただしい数の「震災後文学」が書かれた。
故郷と肉親・友人・知人の喪失、原発問題、放射線による生物の変容、被災地と非・被災地の温度差、
東北と東京の温度差、政権への批判、真偽不明の情報と感情の洪水としてのSNS、
記憶や時間感覚の混乱、死者との対話、
「書けない自分」「無力な自分」へのフォーカス、復旧・復興、言論統制や自主規制、ディストピア化した日本、テロやデモや群衆蜂起、戦争文学との接続……
さまざまな作品、さまざまなテーマがうまれた。
3・11以降にうみだされた「震災後文学」を扱う渾身の評論集。
対震災実用文学論—東日本大震災において文学はどう使われたか(宮本道人)
東京新聞夕刊の【大波小波】欄でも「文系の発想では不可能な『文学は何の役に立つのか』と論をたてる」と高評価!


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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野 FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/