FENICS メルマガ Vol.9 2015/4/25
1.今月のFENICS
 新年度がはじまりました。新しい環境に身を置かれたみなさま、それぞれにだいぶん慣れたころでしょうか。FENICSもNPO法人として、初めての新年度をむかえ、心あらたに年度計画をねったところです。
 シリーズ出版のほうは、2巻『フィールドの見方』が来月に発売となります。当初の計画よりもかなり遅れがちではありますが、確実にいい書物の出版と、それにともなったイベントをつうじ、フィールドワーカー間の交流、より広い分野の、関心をもってくださる方々へ本活動の裾野を広げて行きたく思います。どうぞよろしくおねがいいたします。
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(中村一樹)
3.フィールドワーカーのおすすめ(酒井麻衣)
4.フィールドごはん(饗庭伸)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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雪の災害が起こるフィールド
             中村一樹(15巻執筆者)
 15巻の原稿を執筆していた時から職場が変わり、現在は山形県新庄市にある防災科学技術研究所雪氷防災研究センター新庄雪氷環境実験所に勤務している。今の私のフィールドは、雪の災害が起こる場所、つまりは雪のある場所全てである。
 2014年2月半ばに通過した南岸低気圧により関東甲信地方を中心に大雪となったことは記憶に新しいところである。当然出動となり、山梨県に調査に入った。私は、北海道生まれ、北海道育ちで、北海道でも雪崩の調査をしてきたが、あんなにたくさんの雪崩を見たことがない。関東から甲信地方の山間部に無数の雪崩が起きていた。その中でも、特に印象に残った雪崩を紹介する。
 山梨県甲府市古関地区(旧上九一色村)の県道で見た雪崩は、これまで見たことがないものであった。まずその道路に堆積している雪の高さに圧倒された。高さ15mの雪が道路をふさいでいた。そして、その雪の中からオープンカーのような自動車が出てきたのには、さらに驚いた。それはオープンカーではなく、上部が完全につぶれているセダン型の自動車だった。雪の重みでここまでつぶれた車を初めて見た。乗っていた人は大丈夫だったのか。県の担当者に聞いたところ、人の被害はなかったらしい。雪崩発生当時現場にいた人のうち一人が近くに住んでいることがわかり、話を聞くことができた。
 夜に車を運転していたところ、ちょうど前の車が小さな雪崩の堆積につっこんで動けなくなったので、脱出を助けようと車を降りて、前の車のところに行った時に、今度は大きな雪崩が自分の車に直撃したのだという。前も後ろも雪崩が次々と起こっていて、脱出できないと思ったその時に、雪崩は沢状の地形になっているところから道路に流下していることに気付き、前の車の運転手と一緒に沢の箇所を避けて、道路の横が尾根状になっているところまで徒歩で移動し、真っ暗で雪崩が起こる不気味な音が聞こえる中、二人で励ましあって一晩外で過ごしたそうである。二人は翌朝明るくなって無事救助されたのだが、焦って無理に脱出しようとせず、また車にとどまらず、冷静に状況判断をして安全な箇所に移動してその場にとどまった判断が生還できたひとつの要因であろう。
 この時の大雪で、甲府では、これまでの最深積雪深49cmを大幅に上回り、114cmの積雪となった。当然雪国のように雪崩防止柵のようなハード対策が行われているはずもなく、急傾斜の雪崩が起こりやすい地形の箇所ではことごとく雪崩が発生していた。近年、今まで起きたことのない気象状況になり、これまで考えられなかった災害が起こる事例が増えているように感じる。想定を超える災害が起きた時にどのように行動するのか、今回フィールドでインタビューした内容は、災害発生時に自分の身を守るひとつのヒントになるような気がしている。
【フィールドへの行き方】
車の場合:中央自動車道・甲府南ICから国道358号線を南進(約25分)、県道36号へ左折し500m、芦川渓谷の手前。
公共交通機関の場合:最寄りのバス停はありません。JR甲府駅南口からタクシーで約50分。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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酒井麻衣(12巻分担執筆者)
無人島に生きる十六人 (新潮文庫)須川 邦彦 (著)
明治時代の実話。嵐で船が難破し、ハワイ諸島の無人島に流れついた帆船・龍睡丸の乗組員16人。水を確保したり、薪を探すために他の島を探しに海へ乗り出したり、ウミガメを飼ったり。励まし合い、知恵と力を合わせて無人島生活を送ります。協力し、楽しく働き、悲観的にならず、生きていこうとする姿勢には、心を打たれ、同じ日本人として誇らしいほどです。フィールドは日常と異なる環境で、精神的・体力的に消耗することもありますが、彼らのようにしっかり働き、笑って楽しく乗り切っていこう、と励まされる一冊。
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4.フィールドごはん
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「大船渡市三陸町綾里地区のホタテ」(饗庭伸・5巻分担執筆者)
研究室でフィールドに入る事が多いので、集合的な記憶に残るフィールドごはん、を思い起こしてみると、近年のそれは、何と言っても大船渡市三陸町綾里地区の「ホタテ」である。ここでは2012年の災害復興の支援からはじまり、その後に継続的に地域社会や昭和の津波の復興過程の調査を行なっているところなのだが、現地の漁業がともかく高度化、複合化していることに最初は驚いた。都会で暮らす、せいぜい1~2つくらいの規則的な仕事しかしていない私たちからは考えられないほど、彼らは多種の漁業を組み合わせているし、それぞれが細かな研究とイノベーションの蓄積なのである。調査している小石浜集落は「ホタテ」の養殖技術がガラパゴスのように発達し、えらく美味な大粒のホタテがたくさん採れるところである。そこで調査をしていると、ものすごい量のホタテを「食いな」といただく事になる。そうなると、朝もホタテ、昼もホタテ、夜もホタテ・・・とともかくホタテづくしとなり、私たちは養殖ってすごいなあ、技術ってすごいなあ、ということを思い知るのである。
卒業した研究室のメンバーと会うと、必ずそのホタテの話になる。しかし面白いことに、誰も「もうホタテを見たくない」と言わない。それは、ともかく、幸福な場所の、幸福な記憶として、思い出の中に刻み込まれているようだ。
ホタテ養殖の「耳つり」という工程に失敗したホタテをバケツ一杯大量にいただいた時の食事

ホタテ養殖の「耳つり」という工程に失敗したホタテをバケツ一杯大量にいただいた時の食事

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5.今後のFENICSイベント
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・2巻『フィールドの見方』が書店では6月1日から、会員のみなさまには5月中旬に送料無料+会員割引価格でご案内の予定です。
・来月より、12巻『女も男もフィールドへ』に関連する、「フィールドワークとキャリアアップ、子育て、介護などとの両立を考えるアンケート」を実施いたします。フィールドワーカーへのアンケートです。会員以外にも、ひろくお願いしたいと思いますので、その際にはご協力のほどお願いいたします。
・7月4日にEC(エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ・国際映画百科事典)を使ったイベント@東中野ポレポレ第二弾を予定しています。
・子持ちフィールドワーカーのサロンも計画中です。
・総会、全体イベントは今年も11月1日で計画中です。
いずれも、詳細は、決まり次第お伝えします。しばらくお待ちくださいませ!
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第1巻
『フィールド映像術』(椎野若菜・白石壮一郎編)
「調査写真・画像から展示をつくる」
(高倉浩樹)
調査地の映像を使って人類学者の研究の営みを総体として展示する、これが映像を使ってフィールドワーカーは何ができるか、に対する私なりの答えである。それは調査者が暮らす母国の市民社会に対して、ささやかなものではあるが、異文化理解の場を設け、そこに人びとを巻き込む取り組みであった。映像を用いる研究者そのものの存在が社会を変える媒体になるという考えである。……
(15巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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会員(1巻分担執筆者)の大門碧さんから、博論をベースにしたフィールドワーク成果を盛り込んだご自身の著書の案内をいただきました。
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大門碧著『ショー・パフォーマンスが立ち上がる:現代アフリカの若者たちがむすぶ社会関係』(春風社、2015年3月31日出版、4500円+税)の紹介
このたび、ウガンダの首都カンパラで細々と続けてきた、ショー・パフォーマンス「カリオキ」を対象にしたフィールドワークをまとめたものを出版しました。
本書の目的は、「カリオキ」の公演準備や本番の様子を観察することをとおして、パフォーマーたちである若者たちの社会関係の実態を明らかにすることです。
もちろんウガンダのカンパラならではの地域的な特性についても取り上げていますが、アフリカ諸国の多くの都市とも共通点があるため、本書で考察している社会関係は現代アフリカ都市の若者たちの社会関係のひとつとして提示できるものと考えています。
本書を執筆するにあたって、現地にいる臨場感を出したいと考え、コラムや写真を挿入し、また自分がパフォーマーとして参加した経験も資料として取り上げて描くことにも挑戦しました。
これらを試みることができたのはFENICSにかかわらせてもらった成果のひとつでもあると考えています。
(目次はhttp://www.africa.kyoto-u.ac.jp/book/073.htmlを参照ください。)
アフリカ研究者はもちろんですが、都市の芸能やポピュラー音楽、若者文化や社会関係に興味のある方に手をとっていただければ大変うれしく思います。
どうぞよろしくお願いします。
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本号はいかがでしたでしょうか。本年度もよろしくお願いいたします。
ご活躍の様子は、いつでもお知らせいただければ幸いです。
お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/