FENICS メルマガ Vol.8 2015/3/25
1.今月のFENICS
年度末ということでいろいろある季節、みなさまいかがお過ごしでしょうか。梅や桜が咲き始め、いよいよ春ですね。来月からまた職場が変わる方もいらっしゃるでしょうが、みなさまの春が良いものとなりますよう。
シリーズ出版のほうは、ただいま2巻、つづいて7巻、13巻、12巻、6巻・・・と鋭意編集中です。ほか、もろもろ遅れておりご迷惑をおかけしております。また原稿が遅れている方も、どうぞよろしくお願いいたします。また、1月に刊行されました15巻『フィールド映像術』の書評を小沼純一さんからいただきました。ぜひ、ご覧下さい。http://bit.ly/1ArMkMV
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(福井幸太郎)
3.フィールドワーカーのおすすめ(岩野祥子)
4.フィールドごはん(久保忠行)
5.チラ見せ!FENICS
6.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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ブータンでのヒマラヤ氷河観測
福井幸太郎(第6巻『マスメディアとの交話』編者/富山県立山カルデラ砂防博物館)
 昨年9月から10月にかけて、世界的に活躍している氷河研究者である名古屋大学の藤田耕史准教授からのお誘いを受け、ヒマラヤの小国ブータンでの氷河観測に参加した。
9月24日、バンコク経由でブータンのパロ国際空港に到着。この空港は深い谷底 にあり、離着陸の難しさは世界屈指といわれている。使用機材はエアバスA319 のエンジン強化型、機内は欧米人観光客でごった返していた。
 空港からタクシーで1時間程走ると首都ティンプーに到着。首都といっても人口10万人ほどの小さな町だ。標高は2400mと立山の室堂並みに高く、ホテルの階段の上り下りで息が上がる。ここで3日間、出発準備を整えた。
 9月27日早朝にティンプーを出発。今回の観測隊は藤田隊長と私、ブータン地質 鉱山局のプンツォとペンジョール、トレッキングガイドと馬方数名、荷物運搬用 の馬20頭の大部隊だ。ブータン中部のブムタン地方まで車で行き、その後は観測を行うガンジュラ氷河までスノーマン・トレックと呼ばれる登山道を3週間ひたすら歩く。歩いた距離は合計300 kmに及び、途中、標高5000 m前後の峠(最も高いゴフラ峠は 5500 m)を9つも越えた。高山病が心配だったが、幸いメンバー全員最後まで元気でいることができた。
宿泊は毎晩キャンプ、食事は唐辛子のチーズ煮込み(エマ・ダチ)と米がメイン。ブータン人はとにかく唐辛子が好きで野菜のように毎日食べていた。私ははじめ汗ダラダラで食べていたがすぐに慣れてしまい、逆に唐辛子が無いと物足りなくなってきた。
 出発から2週間後の10月11日、ガンジュラ氷河のベースキャンプ(標高5000 m)にようやく到着した。ここには3日間滞在した。ガンジュラ氷河はヒマラヤで最も急速に縮小している氷河のひとつだ。現在の長さは1.1 kmと、剱岳の三ノ窓氷河よりも短くなっている。ガンジュラ氷河では、アイスレーダーとよばれる機械を使った氷河の厚さの観測を担当した。その結果、最も厚いところでは75 mの厚さがあり、この氷河は急速に縮小しているものの十分な厚さがあるので当面消え去る心配は無さそうであることがわかった。
10月14日、ネパールに大雪をもたらし43名の死者を出したサイクロンの影響で 我々のベースキャンプも季節外れの大雪に見舞われた。観測はほぼ終了していたので、この日にベースキャンプから安全地帯へ脱出することにした。
 10月17日、自動車道へたどり着き、古都プナカ経由でティンプーに生還、三週間ぶりの下界は秋晴れだった。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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「遊星からの物体X」(1982米) 監督:ジョン・カーペンター
岩野祥子(第10巻『フィールド技術のDIY』
 この映画を、南極越冬中に観てしまいました。どれだけ怖かったか!
「遊星からの物体X」は、アメリカの小説家、ジョン・ウッド・キャンベルが1938年に発表したSF小説「影が行く」(Who Goes There?)を映画化した作品です。3作品ありますが、わたしが南極越冬中に観たのは2作品目。1982年版の“The Thing”(監督:ジョン・カーペンター)でした。
 舞台は南極。氷の中に埋まっていたUFOを発見し、「物体」“The Thing”を掘り出してしまうことから事件は始まります。「物体」は犬や人間などの生物を喰らい、その姿に擬態します。自分たちの誰が「物体」なのかが 分からなくなる隊員たち。
 基地内の人間すべてが「物体」の犠牲になるのは時間の問題。「物体」が南極を出て世界に広がれば、人類は2万7000時間(約3年)あまりで 「物体」に成り変わられてしまう…。
 ぜひ南極で越冬して、次の夏に「しらせ」が来るまで逃げ出すことのできない昭和基地でこの映画を観てほしいです!
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4.フィールドごはん
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「難民の食と暮らし」
久保忠行(第11巻『衣食住からの発見』分担執筆者)
 油を多用するビルマ(ミャンマー)料理は、少なくとも私の口にはあまり合わない。対照的に、私が調査するビルマの少数民族カレンニー(赤カレン)の料理は、塩や胡椒でさっぱりとした味づけで、ご飯もすすむ。いわゆる山の民というだけあって、自生している葉をスープにして食べることが多い。カモンチンユエというマメ科の葉や、シソ科のチンバウンユエは、どこか懐かしい味がする。日本では食べないカボチャの葉もスープにするし、胡椒の実で味付けをしたスープは絶品である。
 タイで難民として暮らす彼らは、支援の一環として難民キャンプからアメリカなどの先進諸国に再定住している。アメリカでもナイロン製のゴザを絨毯の上に敷いて、同じような料理を共食しており、暮らしの連続性を感じさせる。しかし、私が会ったすべての人は口をそろえて言う。「タイにいた頃のほうがおいしかったな」。食材は、さばきたての豚肉から安価な冷凍牛肉になり、採れたての野菜は冷蔵されたものに代わった。かつて食べていた葉や生の胡椒の実など手に入らない食材もある。安価なコーラを飲む量が増え、多くの人が太り始めていた。難民キャンプでの食生活を懐かしむ人もいる。ものごとの一面にすぎないが、暮らしの「良し悪し」とは相対的なものに気がつくことも、難民としての経験なのかもしれない。
(写真は、アメリカ合衆国ウィスコンシン州での筆者への「おもてなし」と共食の場面)
久保忠行karenni foods-kubo
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5.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第1巻
『フィールドに入る』(椎野若菜・白石壮一郎編)
「森の水先案内人-大型類人猿調査と「トラッカー」」
(竹之下祐二)
1994年3月のある日、修士の1年目の終わりに、僕は『悪霊』に導かれ、中央アフリカの森を歩いていた。僕をここへ連れてきてくれた京都大学自然人類学研究室(当時)の黒田末寿さんは、今日は体調が悪いと言ってテント場で休んでいる。でもたぶん嘘だ。臆病な僕が黒田さんに頼り切りなのに業を煮やしたのだろう。僕は心細さを必死で隠して、じゃあ今日は一人で行ってきますといってテント場を後にしたのだった。……
(1巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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6.FENICS会員の活動
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(1)増野亜子会員によるガムランコンサートのお知らせ
(2)波佐間逸博会員による単著出版のお知らせ
(3)川瀬慈会員による編著出版のお知らせ
(1)マメタンガン チャベ春ライブ
増野亜子会員(第13巻『フィールドノート古今東西』分担著者)が企画のライブ紹介です。
小編成のガムラン・ググンタンガンと歌・踊りによるマメタンガン・ライブ、好評につき再演!
マメタンガンは、は笛で旋律を演奏する、バリの伝統音楽ガムラン・ググンタンガン専門の演奏集団です。ググンタンガンは大編成のガムランとは一味違った軽妙な音色とドライブ感が特徴です。今回は伝統的な器楽曲や、歌芝居アルジャに登場する女官や王女の歌と踊りを、チャベさんの美味しいインドネシア料理の軽食と一緒にお楽しみください。
場所:チャベ目黒通り店
日時:4月26日(日)16:00開場 16:30開演
出演:マメタンガン
[安田冴・塩谷智砂(歌と踊り)石井留美・石塚千東・伊藤祐里子・上原亜季・城島茂樹・新留美哉子・根岸久美子・増野亜子・若林康明(演奏)]
前売 3,000円 当日3,200円 定員30名
ご予約・お問い合わせ(前日までにご連絡ください)mametangan@zoho.com
(2)波佐間逸博著『牧畜世界の共生論理:カリモジョンとドドスの民族誌』京都大学出版会、3月12日発行、税込 4,752円。
波佐間逸博会員(第4巻『現場で育つ調査力』分担著者)ご本人より、紹介文をいただきました。
このたび、東アフリカ・ウガンダ共和国、サバンナにおける牧畜民の生活・社会調査をまとめ、出版いたしました。
 牧民による牛や山羊の精緻な認知にとどまらず、家畜による細やかな人間の認知、さらには家畜の「擬人化」、人間の「擬獣化」といった現象を含め、動物と人は、どのように社会的な存在としてからみあっているでしょうか。そして、生業における自然的他者とのかかわりは、対人関係の世界の構成とどのように関連するでしょうか。
 本書は、家畜との共生を軸にした東ナイルの人びとの個性的な生活実感にもとづいて、自動小銃を使った牛略奪をめぐる紛争や武装解除開発といった激動する社会環境も視野に入れ、伝統的な牧畜の持続可能性をさぐる試みです。
 アフリカ研究者や牧畜研究者はもちろん、生態やコミュニケーション、他者関係といったフィールドワークの対象領域に関心のある方にもひろく興味を持っていただける民族誌になっていると思っております。
お手に取っていただけますよう、よろしくお願いします。
(3)鈴木裕之・川瀬慈編『アフリカン・ポップス!―文化人類学からみる魅惑の音楽世界』
 明石書店、3月 31日発行、2,500円(+税)
川瀬慈会員(15巻編者)からのご紹介です。
<主な内容>
1.カーボ・ヴェルデのクレオール音楽(青木敬)
 2. タンザニアのスワヒリ歌謡、ターラブの一世紀(檜垣まり)
3.伝統とモダンのあいだ:あるグリオ一族の歴史(鈴木裕之)
4. 闘争の唄、チムレンガ・ミュージック(松平勇二)
5. 情報で世界とつながる:アビジャン・レゲエの成立と展開(鈴木裕之)
6. フェラ・クティのアフロ・ビートとナイジェリアの音楽(塩田勝彦)
7. イマジネーションの共振:エチオジャズの世界的展開(川瀬慈)
8. エチオピア表象の理想をめぐるジャム・セッション(川瀬慈)
9.カメルーンの若者たちが望む世界:
   ヒップホップ・ミュージックの制作現場から(矢野原佑史)
※本書には、各章のなかでとりあげた音楽やミュージシャンの代表的な
CD作品や映像作品の紹介コーナーも含まれます。
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いかがだったでしょうか。
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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
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