FENICS メルマガ Vol.7 2015/2/25
1.今月のFENICS
慌ただしく気がつけば2月も終わろうとしておりますが
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
3・11もふたたび、近づいて参りました。先日はまた大きな余震もありました。
今回は5巻『災害フィールドワーク論』に関連する記事を二本収録しております。
まだご覧になっていない方は、ぜひとも手に取っていただきたいです。
編集のほうは、ただいま2巻が大きく進行中です。
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(杉戸信彦)
3.フィールドワーカーのおすすめ(久世濃子)
4.フィールドごはん(里見龍樹)
5.チラ見せ!FENICS
6.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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白馬村の地震の緊急調査(杉戸信彦:第5巻『災害フィールドワーク論』編著)
2014年11月22日(土)22時08分頃、長野県北部において最大震度6弱を記録する地震が発生した。東京の自宅でのんびりテレビを眺めていた時である。すぐに情報収集を開始。すると地震規模、震央位置、深さ、そして震源メカニズムは、あの「神城断層」がずれ動いた可能性を示唆していた。
神城断層は白馬村付近にあって、日本列島を縦断する長大な活断層「糸魚川-静岡構造線断層帯」の北部を構成している。筆者は2006年から約4年間神城断層の調査に参加し、その後も調査を継続していた。お世話になってきた現地の方々のことを考えても、今回の地震の原因を正しく、かつ一刻も早く発信する責務が、筆者にもあると思った。気がつくと翌朝白馬入りするルートを考えながら装備を整え始めていた。
東京から白馬へは長野経由がもっとも早い。しかしオリンピック道路の通る犀川丘陵は斜面崩壊の多発地で、周辺ルートも含め通行止めかもしれない。一方、松本から白馬に至る一般道はおおむね盆地内にある。新宿から松本への特急「あずさ」も、各地の震度からみて翌朝には定刻通りだろう。日付が変わった頃、松本からのレンタカーを予約して床に就いた。そして5時過ぎに起床。7時発の「あずさ1号」に乗った。お昼前に白馬に着いて予定通り信州大グループに合流し、踏査を開始した。
合流する直前、よく泊めてもらった民宿が倒壊していないことを確認した。しかし家の中は大丈夫だろうか、と考える。掘削調査でお世話になっていた地権者さんは、家の中の片付けに明け方まで追われ、疲れ果てていながらも、レンタカーを敷地内にとめさせてくださった。翌週目撃した別の地権者さんの姿も記憶に残っている。自宅が断層の「ずれ」で居住不能となり、避難生活に向けて縁側で荷物をまとめていた。
地震翌日は結局、夕暮れまでに、神城断層の地表トレースに沿って明瞭な地表地震断層を確認。神城断層が引き起こした地震、いう結論を得て現地を後にした。その翌日は大学で講義し、そのまま新潟で開催中の地震学会に向かわねばならなかった。大学で、また新潟への移動中も信州大グループと連絡を取り、晩遅くに活断層学会と地理学会を通じて速報が公表された。
12月に入っても調査を継続。いつしか20名を超えるメンバーが入れ替わって参加し、本格的な降雪の前に地表地震断層を記録すべく、分担して作業していた。のちに「2014年神城断層地震地形調査グループ」と命名されることになる。そして根雪。この春の雪解けはいつだろうか。
【フィールドへの行き方】
長野から白馬までオリンピック道路で1時間。連絡バスあり。松本からは一般道で1時間半、大糸線で1時間半~2時間(特急は1時間だが1日1往復のみ)。糸魚川からは一般道で1時間、大糸線で1時間半~2時間。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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アグネス・キース著(田中幹郎訳)2005年『風の下の国』(Natural History Publication)
久世濃子(第12巻『女も男もフィールドへ』・第13巻『フィールドノート古今東西』分担執筆者)
 私のフィールドは、ボルネオ島マレーシア国サバ州です。フィールドに関連する本として、必ず人に勧めるのが、アグネス・キース著(田中幹郎訳)2005年「風の下の国」(Natural History Publication)です。原著の初版は1939年!当時、イギリス統治下にあったサバで、森林管理官を務めていたイギリス人男性と結婚した、アメリカ人女性が作者のノンフィクションです。原題「Land Below the Wind」は今もなお、サバ州の別名として、現地及び欧米では有名です。
 第二次世界大戦前のサンダカンの町や熱帯雨林の様子、先住民や在留外国人達の生活が活き活きとした筆致で描き出されています。特に女性が熱帯雨林の中で生活する時の悲喜こもごもの率直な感想は、私が今読んでも共感できますし、多くのフィールドワーカーの皆さんにとっても、「あるある」と思える話題が満載です。
 戦前、日本でも翻訳が出版されましたが、長く絶版になっていました。サバ州の出版社が戦前の版には含まれていなかった章も含む完訳版を発行!送料はかかりますが、オンライン・ショップ(http://www.nhpborneo.com/book/land-below-the-wind-chinese/で購入できます。英語版ならオンライン書店で購入できます。
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4.フィールドごはん
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南太平洋の「プディング」里見龍樹(第11巻『衣食住からの発見』分担執筆者)
ソロモン諸島マライタ島での調査生活の中で、最大の楽しみの一つは毎週日曜日のごちそうだ。マライタ島の人たちは、土曜日になると、日頃の食生活の単調さを埋め合わせるかのように、たいへんな手間をかけてごちそうを作り、日曜の朝から昼過ぎにかけてそれを満喫する(なお正確には、ごちそうの曜日は教会によって異なる)。メインとなるのは、キャッサヴァやサツマイモをすりおろし、ココナツ・クリームと混ぜて石蒸し焼きにした「ガラ」という料理だ。英語やピジン語では「プディング」と呼ばれるこの料理は、材料がキャッサヴァの場合には明るい黄色の、もちもちした食感をもつ蒸しパンかモチのような食べ物で、自然な甘みが味わい深い。
この「ガラ」に、いっしょに焼いた魚と、マングローヴの種子で作る「コア」と呼ばれる料理が加われば、休日のごちそうの完成だ。理想的には、ここに一杯の紅茶が加わってほしい。マライタ島の人は紅茶に砂糖をたっぷり入れて飲むことを好むが、砂糖は高価なので紅茶はぜいたく品だ。ある日曜の朝、町で買ってきた砂糖で紅茶をいれて渡すと、ホームステイ先の4歳くらいの男の子はうれしそうにすすり出した。「ガラ」を食べながら、満足げに「サトミ、おいしいね!」と語りかけてくるその子の顔を見ながら思ったものだ。世界の一隅にこんな幸せがあることを、いったいどれだけの人が知っているだろうか?と。
プディング
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5.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ5巻
『災害フィールドワーク論』(木村周平・杉戸信彦・柄谷友香編)
「超広域災害に立ち向かう――東日本大震災被災地での住民参加・組織型フィールドワークの試み」(佐藤翔輔)
3・11のあの日から
「君はすぐに仙台に行ってきてください。」――これは、2011年3月11日14時57分に受信したメールである。送り主は、当時の指導教員だった林春男教授(京都大学防災研究所)である。当時その半年ぐらい前に東北大学(宮城県仙台市)に着任することが内定していた。著者の着任予定地が、これから大変な事態になることを予見した師は、地震発生から約10分後に、現地に即刻向かう指示をした。同日中に支度をととのえ、20時頃に京都を出発し、鈴木進吾助教(京都大学防災研究所、宮城県岩沼市出身)とともに京都から自動車で現地に向かった。途中降雪や通行止めに見舞われながらも、翌日3月12日の正午頃、なんとか仙台市内に入ることができた。
(5巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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6.FENICS会員の活動
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会員の川瀬慈さんの関わられているイベントのお知らせです。(チラシが添付されています)
日本映像民俗学の会 第37回 岐阜大会が開催されます。
日時:2015年3月27日(金)、28日(土)、29日(日)
※28日のみ、非会員は入場料500円
会場:岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲サンサンホール(駐車場有)
〒501-1314 岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲名礼264-22
電話番号 0585-56-3733
28日(土)は<ふるさとの喪失と再生>というテーマのもと、徳山ダム建設に伴って消滅した徳山村(現・揖斐川町)の人々の暮らしを記録した『水になった村』、原発から20km圏内の故郷、南相馬市を歩き思い出を語る小説家の姿をとらえた『原発被災地になった故郷ヘの旅 —福島県南相馬市—』、さらに、東白川村を舞台に、かつて行われていたカスミ網猟の記憶をめぐり、人、鳥、自然のつながりを考える『鳥の道を越えて』、合計3本の映画上映を行います。上映後に総合討論を行います。
上映作品の情報は、チラシをご覧下さい。
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