FENICS メルマガ Vol.5 2014/12/25

1.今月のFENICS
メリークリスマス!
みなさまクリスマスはいかがお過ごしでしょうか。
ワタクシは山の上に出勤しております。
本年最後となりました、
FENICSメルマガ第5号をお届けします。

それでは本号の目次です。

—————–
1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(白石壮一郎)
3.フィールドワーカーのおすすめ(青井隼人)
4.フィールドごはん(植竹淳)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動

—————–

2.私のフィールドワーク
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
墓穴を掘る (白石壮一郎・1巻、7巻編者)

アフリカの農村に住みこんでフィールドワークをしたことのある人なら、誰でも聞いたことがあるかもしれない。どこかから聞こえてくる、歌のような悲しい女の声。人が死んだのだ。ウガンダ共和国の山村での初めてのフィールドワークのとき、村に来て3日目にその声に遭遇した。自然に泣いていてそのようなものになるだろうか、というような細く長く続く悲しいチューン。そのような声の主は、夫や子供を亡くした女性、亡くなった隣の奥さんのために泣く女性などだ。声は何時間か断続的に続く。
住みこみのフィールドで、最初は「?!」と思うようなものごとでも、何度も経験しているうちに慣れてきて、村びとと似たような対応ができるようになってくる。何度目の滞在だったか、居候先の家族と朝のチャイ(ミルク紅茶)を飲んでいるときだった。あの声が聞こえてきて、みなで顔を見合わせて「川向こうのほうからだ、誰だろう」などと言って、ひそひそ話す。
山の午前の清涼な空気にだんだん強い陽が射し始めている。三々五々にその方角に向かう人びとと合流して歩く。声の痛烈さに負けて、涙腺が刺激される。連れ立って歩く若者はいつもとそれほど変わらない表情だが、私が「正直なところ、涙が出そうだ」と告げると「おれも腹(胃袋)で泣いている」と返してきた。調査者の性で「あ、そんな表現をするんだな」とつい思ってしまったのを、いまでも憶えている。
その家に着く。母屋では、床に膝を延ばして座り、背後を近所の女たちに支えられながら体力の限りを尽くして泣き続ける、子供を亡くした女の姿。「いつまで泣くのだろう」と私が連れの青年に尋ねる。「まだ小さな子供だが、もう歩き回るので近所に顔も知られていた。もう少し泣くだろう。働き盛りの男女が死んだときはもっと泣く。長生きして死んだ老人の場合には、こんなに泣くことはない」。
家の裏手のバナナ園の脇では、すでにどこからか調達されてきた2本のシャベルを、集まった男たちが上半身裸になってふるい、墓穴を掘り始めている。みな顔見知りばかりだ。かわるがわるにシャベルを握り、黙々と掘っている。 連中の傍らに私も立つ。気づいた者が目で挨拶してくる。やがてシャベルが私の手にも回されてきた。すでに腰あたりの深さに迫りつつある穴に飛び降り、もうひとりの男とひたすら掘り始める。何分続いたろうか。黙って私にシャベルが手渡されることは、かれらの社会が私を受け容れてくれていることのとても端的なしるしのような気がして無性にありがたく、またうっかり泣きそうになった。

【フィールドへの行き方】
日本の国際空港からドバイやドーハなどを経由してウガンダのエンテベ空港。エンテベから首都カンパラへ。カンパラからエルゴン山まで7-8時間かけて山の中の小さな町、その町から崖を下って40分で村に着く。10年くらい前までは、エルゴン山の麓から小さな町までは舗装道路がなく国内随一の悪路であり、首都から麓の町まで6時間、麓から山の中の村までさらに6時間かかった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
3.フィールドワーカーのおすすめ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
レミオロメン「スタンドバイミー」(青井隼人/第10巻『フィールドワークのDIY』著者)

私の調査地・多良間島は宮古島と石垣島の間に浮かぶ小さな島だ。沖縄の離島を調査地にしているというと、大抵の人は羨ましがる。沖縄の海で泳げるなんて、とか、どんな魚が釣れるの、とか言って。しかし私は泳ぐのがそんなに好きではない。釣りだってしない。では私にとっての島の楽しみは何かというと、それはサイクリングだ。
多良間島の周囲は約20km。1時間もあれば自転車で一周できる距離だ。太陽が最も照りつける時間帯のサイクリングはとても気持ちがいい。強い陽射し、心地よい風。道沿いの福木が風に揺れる。のんびりと闊歩する牛の群れ。そして一面のサトウキビ畑。横を通過していく車は数えるほど。視界を遮るものは何もない。
サイクリングのときに聞く音楽は日本語ロックと決めている。気分が乗ってくると聞くだけでは飽き足らず、大声で歌ったりもする。憚る人目はない。
多良間島でのサイクリングを想像すると、いつもこの歌が頭の中に流れる。これから起こる素敵なことを予感させるイントロ。夏の陽射しがよく似合う疾走感のあるメロディー。高校時代のまっすぐさを思い出させてくれるような爽やかな歌詞。久しぶりに聴いていたらまた自転車を漕ぎたくなった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
4.フィールドごはん
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一瓶のジャム(植竹淳/第8巻『失敗・災難をこえて』著者)

氷河に泊るフィールドワークでは、皆で食事を楽しくとることは、チームの輪を保つためにとても重要な要素のひとつだ。なので、食事には“うまいもの”を食いたい。
しかし、そんな欲望とは裏腹に、空腹に喘ぎながらもがくフィールドがあった。2002年ブータン氷河調査。麓の村から氷河までは徒歩で10日以上もかかり、途中5000mの峠も越える。食料を含むすべての物資は、家畜(ラバとヤク)の背中で運ばれ、おなじく長い旅を経て調査地にたどり着く。その、はずだった。
氷河まであと2日のところで、諸処の理由により家畜がほとんどストップし、最低限の物資と人だけが前進することになった。日中は、氷河の上を歩きまわる肉体労働にも関わらず、コックから与えられたランチは小ぶりのジャガイモ2個とゆで卵1個だった。しかも卵は腐っている。キャンプでの食事もろくにでない。食べ盛りの大学院生に、これはキツかった。コックが何か要望はあるかと聞いてくれたので、ランチのジャガイモを3個にしてくれと懇願した。
キャンプ最上の食べ物は、ジャムだ。できるものなら独り占めしたい。みんなそうに思ったのだろう、トランプの大貧民で大富豪になったものだけが、禁断の甘いジャムを口にできるローカルルールが定められた。もはや教授も学生も関係ない。弱肉強食の争いは、夜遅くまで繰り広げられたのだ。ちなみに、この時飲んだ酒は、効きがよくてお気に入りだ。ラベルには、確か和光特級エタノールとか書いてあったような気が。

 

*手違いでメルマガにて写真がある旨お伝えしておりましたが、今回のフィールドごはんは写真がございません。申し訳ありませんが、極寒の地の腐ったゆで卵や和光特級エタノールを想像しながらお読みくださいませ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
5.今後のFENICSイベント
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
年明け早々に初めて京都で、また東京でサロンが開かれます。
分野を横断して、ざっくばらんに情報共有、交換、交流しましょう!
お知り合いにも、ぜひご紹介ください。

(1)*FENICSサロン*古今東西フィールドノート

世界各地におもむき、調査するフィールドワーカーたち。普段、おもてに
出ない彼らの「フィールドノート」は、どのように作られているのか?人類学、
霊長類学、植物学、建築学・・・さまざまな分野からフィールドノートの記
録法、工夫やこだわりを聞く、フィールドノートサロン第2回を開催します!
*13巻『フィールドノート古今東西』にもとづくサロンです

▶話者(予定):久世濃子(霊長類学)、倉田薫子(植物学)、設楽知弘(建
築学)、平田正礼(古生物学)、細将貴(進化生物学)、梶丸岳(歌掛け研
究)、椎野若菜(社会人類学)、丹羽朋子(文化人類学)

▶日時:1月11日(日)13:00〜15:30
▶場所:京都リサーチパーク町家スタジオ
http://www.krp.co.jp/machiya/access.html
▶参加費:会員500円、非会員1,000円(お茶・お菓子付)
お子様づれでどうぞ!
https://www.facebook.com/events/654209831367952/

(2)*FENICSサロン*子持ちフィールドワーカー〜ワークライフバランスをさぐる〜

研究室の外へフィールドワークをすることが必須である仕事、学問に
たずさわるフィールドワーカーが子持ちになったとき、家庭と仕事の両立を
どうしたらいいのだろう。まわりは、まわりはどう変わればいいのだろう。
妊娠、出産、子育て、真っ最中のフィールドワーカーとお茶しながら
話しあってみませんか。
*12巻『女も男もフィールドへ』にもとづくサロンです

▶話者(予定) 三谷曜子(海洋生物環境学)・久世濃子(霊長類学)・國弘暁子(文化人類学)
的場澄人(地球化学)・椎野若菜(社会人類学)

▶日時 2015年1月24日(日)13:30〜16:30
▶場所 信愛書店 スペースen=gawa
西荻窪駅から徒歩3分
お子様連れでどうぞ!
http://kouenjishorin.jugem.jp/?pid=1
▶参加費:会員500円、非会員 1000円 (お茶・お菓子つき)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
6.チラ見せ!FENICS
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
百万人のフィールドワーカーシリーズ11巻
『衣食住からの発見』(佐藤靖明・村尾るみこ編)

「南極におけるフィールドワークの生活技術」(菅沼悠介)

ゴー。突然の轟音で目を覚ます。予報通にブリザードが近づきつつあるようだ。しかし、風は一定の速度で吹きつけるのではなく、唐突に突風が襲ってくるという感じだ。
ゴー、遠くから風の音が先に聞えてくる。さきほどよりもさらに強い風に襲われ、North Face VE-25テントのポールが激しくたわむ。本来は3人用テントだが、われわれはそれを各自で一つ使っている。その地を這うようなフォームから高い耐風性能をもち、多くの厳冬期登山や高峰遠征隊で使用されてきたテントだが、今回はさらに耐風性能を高めるように特注で改造を加えてある。しかし、すでに2ヶ月を過ぎた長い調査期間に、テント生地は強烈な紫外線と激しい風雪を受けてひどく痛んでいる。この状況で、これから本格化するブリザードを最後まで耐え抜くことができるのだろうか。……
(11巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
7.FENICS会員の活動
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1)会員の下中菜穂さんが東京都庭園美術館と共著で本を出版されます。

『キリガミ たてもの文様帖 日本のアール・デコ建築 東京都庭園美術館の巻』

下中菜穂 編著
東京都庭園美術館 共著
エクスプランテ刊 (1400円)

建物に、暮らしに,あらゆるものの上にひっそりと息をひそめている文様。そんな文様を採集して切り紙にする。すると、あなたの手を通して蘇った文様は、その物語を語り始める。庭園美術館の窓に、天井に、排水口に…。こんなところにも優雅なアール・デコが!文様カードをつくれば、さらに文様に新しい命が宿る。フィールドワークの楽しみと手を通して感じる文様の生命力。文様探検の楽しみをぜひ一度味わってください。

●エクスプランテhttp://www007.upp.so-net.ne.jp/xpl/
● Facebook更新中!
https://www.facebook.com/pages/紋切りあそび背守り出版社エクスプランテ/364206603705169
●みんなでつくるたてもの文様帖(庭園美術館と共同企画)
http://www.teien-art-museum.ne.jp/archive/monyo/index.html

*12/11より TSUTAYA代官山店にて、「たてもの文様帖」フェアー開始です。
1月中旬までやってます。よろしかったら覗いてください。

———————————
それでは、みなさまよいお年を!!

お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
http://www.fenics.jpn.org/modules/query/query.html
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/