FENICS メルマガ Vol.46 2018/5/25 
 
1.今月のFENICS   
 
 暑い日も多くなってきましたが、程よい湿度のすがすがしい日がつづきます。
 明日はNPO法人FENICSとしての総会と、あわせてFENICSサロンを東京・武蔵小金井にて開催します。
 昨年につづき、フィールドワーカーの話者お二人をむかえ、フィールドワークの視点から「教育」について考えます。
 FENICSの立ち上げメンバーも子育て世代となり、まさに日本の教育、そして世界のあらゆる地域の「教育」について切実に考えるようになってきました。みなさんとぜひともに考えたいです。
 また今年度はフィールドワーカー(FENICS YOUTH)むけの活動も始動予定です。
 年会費は1000円でご企画に関わる正会員か賛助会員か、多くの方にご協力いただけるとより、活動がひろがります。なにとぞよろしくお願いいたします。
 
 子連れフィールドワークの連載(中川千草さん)、第二弾もお楽しみください。
 
それでは本号の目次です。
 
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(蔦谷匠)
3.子連れフィールドワーク(中川千草)
4.FENICSイベント
5.FENICS会員の活躍(川瀬慈)
          
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2.フィールドごはん
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黒パンとレバーペースト
            蔦谷 匠(人類学・海洋研究開発機構)

デンマークの首都にあるコペンハーゲン大学で実験をしていたときのこと。12時半頃になると、みんなで集まってランチを食べはじめる。他人のお弁当をひそかに観察するのはわりと楽しい。よく見たのは、冷たいサンドイッチだった。地元出身の同僚は、穀物の種がぎっしりつまった黒パンに、デンマークではポピュラーなレバーペーストをなみなみと塗って、テーブルナイフで切ったキュウリをその場で挟んだりしていた。

写真:高級なほうのスモーブロー。専門店のショーケースには、こんなふうにきれいな見た目の種類がたくさん並んでいます。

この黒パン、実においしい。パン屋さんやスーパーマーケットにはいろいろな種類が売っており、風味があるのに酸味はあまりなく、トースターでちょっとあぶると、外側がカリッとして、チーズなんかを乗っけると、もう最高である。ずっしり詰まっているので数切れ食べれば満腹になり、これに慣れてしまうと、ふわふわした白パンでは、もはやごはんを食べた気がしなくなってくる。

黒パンの冷たいオープンサンドイッチは「スモーブロー」と呼ばれており、レストランで供される高級なものもある。こちらはは見た目がきれいで実においしいけれど、物価の高いデンマークでは、残念ながらそう頻繁には食べられない。

ところで、問題はレバーペーストである。これに関しては好みがはっきり分かれるようで、西欧出身の人でも、特有の生臭い匂いを受けつけないことが多いそう。デンマークの人はどうしてこれが好きなのだろう…?と同僚に聞くと、幼少期から食べ慣れているからかな…とのことだった。ちなみに私は嫌いではなく、洋風にトーストとサラダを用意している休日の朝などに時折思い出しては、また食べたくなってくるのだった。
 
 
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3.子連れフィールドワークの道 (連載)
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子連れフィールドワークの道 −乳児・パリ編−第2回
              中川千草(12巻『女も男もフィールドへ』執筆者・龍谷大学)
 

写真キャプション:フランスならではの食材=キヌアを味わう子(0歳)とキヌアになじみのない父(35歳)

 パリ行きに際し、現地の友人たちには今回の渡航目的を確かに伝えていた。しかし、いざ到着してみると、「バカンスに来たんでしょ?」「本当に子連れで仕事をしに来たの?!」と驚かれ、笑われてしまった。子どもと夫と共に行動していたことも、家族旅行のイメージを強めてしまったようだ。が、いずれ夫抜きで子連れフィールドワークをするために、あえて子連れで動いた。また、8ヶ月間、慣れない育児の苦楽を分かち合って来た夫に、子守りを丸投げするなんてできない、と感じたこともその理由の一つである。これは自分でも意外な感覚だった。

とはいえ、子連れは、何をするにも時間がかかる。無駄な動きも多い。すると、この状況に夫がしびれを切らし出した。「こんなペースで大丈夫?」という心配にはじまり、とうとう「研究費を使って、こんな仕事ぶりでいいの?」と言い出した。「子どもと一緒やねんで、仕方ないやん」と言い返していたが、そもそもわたしは、フィールドワークのペースがどうも遅い(かつて、数年かけた調査内容を報告した際、「僕なら3日でできる」とコメントされたこと有り)。しかし、必要な情報だけを効率よく聞き取るのではなく、相手の生活と自分のそれをつないだうえで物事を考えたいので、時間をかけてなんぼのもん、とさえ思っている。夫には、子どもの存在を理由に反論していたが、実は子連れであることはほぼ関係なかった。これが通常運転なのだ。

「俺が子守りするから、もっと仕事したらええやん」「それが、できへんのやって」「ほな、俺、何のために来たん?」「は?来たくなかったん?」「そんなこと言ってへんやん」まさに犬も食わぬであろう夫婦喧嘩を経て、ふと気づいた。フィールドワークを含め、学会発表や論文執筆などの研究活動は、学生時代からつづけているせいか、公私が入り混じり、いまや生活の一部となっている。それを仕事として切り離すことは難しい。フィールドワークは暮らしながらするもの。ほかのフィールドワーカーのみなさんは、そのあたり、どうなのだろうか。

一方、それは、異業種の人間(夫)にとって理解し難いことかもしれない。仕事をしているように見えないのだから、心配したり呆れたりするのは当然だ。思いがけず、自分の仕事観を知ると同時に、子連れフィールドワークは、この「暮らしながらのフィールドワーク」と案外相性が良いことにも気づき出した。8ヶ月の子どもの生活は、食べる(飲む)・寝る・遊ぶを一定のリズムで繰り返す。朝の離乳食を終えたタイミングで出かけ、朝寝・遊び・昼寝を夫に任せ、2回目の離乳食をめどに戻る。さらに赤子の就寝時間は早い。寝かしつけた後にも時間がある。産後、夜の外出習慣がゼロとなり、夜にもフィールドワークができるということをすっかり忘れていた。聞き取りの場は夜のバーでもよいのだ!こうして、パリでのフィールドワークはようやく軌道に乗った。つづく。
 
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4.FENICSイベント
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2018年度総会開催のおしらせ
 
2018年度総会を下記の要領で行う予定です.あわせてFENICSサロンも開きます。
 
日時:2018年5月26日(土)13:00〜18:00
場所:東京学芸大こども未来研究所 Codolabo studio
   東京都小金井市本町6-5-3
   シャトー小金井#109)
 
プログラム
 
 13:00-14:30 総会(年次報告、年次計画・予算審議)
 
 15:00-18:00 FENICSサロン 「野(フィールド)と遊びと教育」
 
 話者: 小森次郎さん(平成帝京大学) 
  『泥遊び・石遊びで学ぶ地域と自然』
 
 話者:二文字屋脩さん(早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター)
  『遊=育のすゝめ:ポスト遊動狩猟採集民ムラブリにみる遊びと教育』
 
 
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5.FENICS会員の活躍
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川瀬慈さん(第15巻 フィールド映像術 編者)から、ご著書とイベントのお知らせです。
 
(1) 『ストリートの精霊たち』
川瀬慈著、世界思想社、定価1,900円(税抜)、2018年4月刊行
(世界思想社創業70 周年記念企画)
 
 エチオピア北部の都市ゴンダールのストリート。そこは人々の経済活動の母胎であると同時に、人がしたたかに自己を表現する劇場でもある。本著の主な対象となるのは、ゴンダールにおいて“精霊(コレ)”と呼ばれるストリートに息づく人々である。本著では、私と彼ら/彼女たちとの交流を軸にそれらの人々の生きざま、夢、希望を描く。
ゴンダールのストリートはどこまでも伸びていく。本著の舞台はエチオピアに限らず、北米からヨーロッパ、日本にも及ぶ。ストリートの広がりは、ゴンダールの人々、そして私自身の移動によってももたらされる。本著のベースは、人類学的なフィールドワークであるが、その語り口は必ずしも実証主義的な論述をとらない。そのかわり、短編小説であったり、随筆であったり、ダイアローグなど、様々な話法を試みている。これらの創造的な叙述のスタイルからたちあがるストリートの息吹を感じてほしい。
 
出版社のサイトでの紹介
 
(2)展覧会『im/pulse: 脈動する映像』
6月2日―7月8日、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
 
映像人類学に関連するレクチャー、インスタレーション、
上映、パフォーマンス等が行われます。
 
詳細は以下のウェブサイトを確認ください。
 
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以上です。お知らせ、いつでもご連絡ください。発信、掲載いたします。
FENICSと共催・協力イベントをご企画いただける場合、いつでもご連絡ください。
 
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/

寄稿者紹介

霊長類学、自然人類学 |

(霊長類学、自然人類学)

環境社会学 at 龍谷大学