FENICS メルマガ Vol.40 2017/11/25

1.今月のFENICS

 冬を感じさせるこの頃です。そしていよいよ12月がそこまできています。
 来月はじめ、つまり来週からFENICSイベントが連続してございます!12月2日(土)から20世紀の映像百科事典「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」連続7夜上映 at ポレポレ東中野Vol.2、そして12月9日には7巻『社会問題と出会う』出版記念イベントがあります!ぜひとも、お誘いあわせのうえお運びください!!!出版記念イベントは、初の高校の先生とのコラボレーションです。

 まだ7巻『社会問題と出会う』をお持ちでない方は、ぜひお申込みください。ウェブでのご登録済みの会員のご注文はFENICSホームページよりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい!

それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(青井隼人)
3.イベントリポート(蔦谷匠)
4.イベントリポート(小森真樹)
5.今後のFENICSイベント
6.正会員の紹介
7.FENICSウェブサイトについてのお知らせ
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2.私のフィールドワーク
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「東京で島のことばを学ぶ術」
青井隼人(言語学・第10巻 フィールドワークのDIY)

写真1. 多良間島の海。ちょうど今くらいの季節に島を訪れた時に撮った1枚

 奄美・沖縄に暮らす人々のことばを調査・記述するのが私の研究(の一部)だ。世界を見渡してみてもあまり見られないような珍しい特徴を持った言語音が奄美・沖縄にはあって、それらがどのような仕組みで発音されるのか、といったことを調べている。

 これまでにいくつもの島を巡ったが、宮古島と石垣島のあいだに浮かぶ小さな離島・多良間島には毎年必ず訪れている。

 多良間島には修士の学生だった頃から通っているので、島の人々との付き合いはかれこれ8年ほどになる。独特な響きをもつ多良間島のことばにも、8年も経てばすっかり耳が慣れ、今では島の人との会話にも不自由がない…わけでは全然ない。私は8年も通っているにもかかわらず、多良間島のことばを充分に習得できていない。

写真2. Evernoteに取り込んだ民話集。右が多良間島の民話が載っているもの。左は私のもう1つのメインフィールドである伊江島のもの

 フィールド言語学者の仲間たちの中には、現地のことばをすっかり習得してしまった人も多い。宮古島のことばを流暢に話し、今では島のスターとなったフランス人までいる。現地のことばがペラペラな彼らとダメダメな私の違いはどこにあるのだろうか。持って生まれた外国語習得のセンスももちろんあると思うが、そういった先天的な性質を除くと、私に決定的に足りていないのは機会である。

 多良間島のことばを使える機会は滞在中に限られる。それなのに私は、島の人々が日本語も話せることに甘えて、ついつい日本語を使ってしまう。また、私の調査は滞在期間が1〜2週間と比較的短く、多良間島のことばで一言二言交わせるようになってきたかな、という頃には帰京の日を迎えてしまうのが常。そして次に島を訪れる前にはすっかり島のことばを忘れてしまうのだった。

 現地のことばが話せるかどうかは、島の人々との信頼関係にも影響する。今のままではこれ以上の信頼関係を築くことは難しい。もっと多良間島のことばを話せるようになりたい。しかし今の私には長期の滞在は(少なくとも今後2〜3年は)できない。現地に行かないでも、現地のことばを練習する機会を作る必要がある。さて、どうしよう…?

写真3. iPodで見たEvernoteの画面。音声とpdfファイル(民話集のコピー)とテキストを1つのノートにまとめてある

 そんなとき、先輩フィールドワーカーから、Evernoteというスマホアプリを活用した外国語学習法を教えてもらった。Evernoteとは、テキスト・音声・画像など何でも記録できるメモツールだ。先輩は、Evernoteに教科書のページのコピーと音声を取り込み、いつでもどこでもスマホさえあれば現地のことばを学習できる環境を作っていた。数年前に宮古空港で民話集を買ったこと思い出し、さっそく私も真似してみることにした。民話集の中から2編を選び出し、コピーしたページをEvernoteに取り込んだ。民話集にはCDも付いていたので、音声もEvernoteに取り込んだ。オリジナルの音声付き多良間島方言テキストの完成だ。

 仕事の前後に時間を作って、テキストを少しずつ丁寧に読み進める。音声をくり返し聞いてディクテーションする。書き取った文章を分析して、単語や文法を覚えていく。通勤電車の中では、音声を聞きながらテキストを読む。聞こえた通りに発音を真似するイメージで、口をパクパク動かしてみる。全文をすっかり暗記するのが当面の目標だ。

 次に島を訪れるのは来年2月の予定。いきなり方言で挨拶したら、島の人々は喜んでくれるだろうかと想像しながら、きょうも通勤電車の中で多良間島のことばの練習に励んでいる。

<関連映像:編集者が聞いたところ、検索してくださり下記がみつかりました>

動画の女性は調査協力者の一人です。

文中にふれた、宮古方言が達者なフランス人の動画もあります。

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3.イベントリポート*会員より*
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★イベントリポート★「“フィールドワークxライフイベント”情報交換&交流会」2017.10.26

蔦谷匠(FENICS正会員、人類学、考古学)

 2017年10月26日(木)、北海道大学低温科学研究所にて、「“フィールドワークxライフイベント”情報交換&交流会」というイベントが開催された。主催は北海道大学低温科学研究所・共同研究集会と、北海道大学人材育成本部女性研究者支援室である。

 低温科学研究所副所長である福井学さん、および、フィールドワーカーをつなぐ活動をしているNPO法人であるFENICS代表・椎野若菜さんより、それぞれ開会の挨拶と、趣旨説明があった。

 その後、最初に話されたのは、国立科学博物館の久世濃子さん。久世さんはボルネオ島で10年以上フィールドワークを続けられているが、最近は長女や次女をつれてオランウータンの調査に出ているという。子供を調査につれていきたいと考え、妊娠中から準備をしていたそう。最寄りの街まで車で悪路を2-3時間走らねばならない熱帯雨林の真ん中で、子供の健康を維持するために、免疫的なメリットのある母乳哺育を継続し、荷物を減らしゴミを出さないため、おむつ無し育児を試みたとのこと。母乳哺育を確立・継続するためには、子供を産む病院の選択が重要であることを調べ、産院選びから計画的に進められた。そうしたスタイルを実行するために、配偶者さんも積極的に育児をされており、会社でもいわゆる「育メン」のスタイルを自分から作っていき、それを周りにアピールされているそう。

つづきは・・https://goo.gl/ybB9Si

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4.イベントリポート*会員より*
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★イベントリポート★「“フィールドワークxライフイベント”情報交換&交流会」2017.10.26-27

小森真樹(第13巻『フィールドノート古今東西』執筆者、文化人類学、ミュージアム研究)

 去る2017年10月26日・27日、北海道大学低温科学研究所において、二日間にわたる共同研究集会が開かれた。集会は二部構成で行われた。第一部では「子育て、ライフイベントとフィールドワーク」が、第二部では「フィールド研究におけるデータ、メディアアーカイブの分野横断的な共有と情報発信」がテーマとなり、FENICSの参加者・運営者を中心に、フィールドワーク研究の方法論から、研究者の「保活」やワークライフバランスなど、幅広いトピックで様々な意見が交わされた。特に第一部は、研究者にかかわる男女共同参画を進める北海道大学人材育成本部女性研究者支援室との共催で行われ、研究領域だけでなく実務・学内事情に明るい方々の意見も交え、さらなる多彩さが際立つ会であった。

 変わって二日目の「フィールド研究におけるデータ、メディアアーカイブの分野横断的な共有と情報発信」では、研究方法論についての議論や、アカデミアにとどまらない多彩な教育活動の紹介がなされた。

 報告者小森の拙論「デジタルヒューマニティーズによる領域横断性:ミュージアムにおけるフィールドワーク調査」では、ミュージアムを研究対象とする分野で自身が行なったフィールドワークを紹介しながら、デジタル時代における研究・調査、資料保存と活用についての議論を行なった。デジタル機器を活用したフィールドワーク、デジタル的な資料保存・保護とその活用や、実務と研究の双方におけるデジタル化の意義や、デジタル化による研究領域の拡大と細分化などに関して、幅広く意見を交わした。単なる研究方法論についての議論を超えて、アーカイヴズ学や資料論的なアイデアに展開するようなコメントもいただき大変参考になった。

つづきは・・・https://goo.gl/xkvfdB

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5.今後のFENICSイベント
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来月はじめ、そして年明けのFENICSイベントの予定がきまりました!!!
たっぷりお楽しみください!

(1)12月2~8日 20世紀の映像百科事典「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」連続上映 at ポレポレ東中野Vol.2
(2)12月9日 FENICS大イベント「フィールドで/教室で 社会問題を考える」@東中野ポレポレ坐
(3)2018年1月20日 FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ ・サロン@京都大学稲盛
「子育てフィールドワーカーのロールモデルをさぐる」

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(1)20世紀の映像百科事典「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」連続上映 at ポレポレ東中野Vol.2

FENICSが企画協力して、多彩なフィールドワーカーたちが7つのテーマで世界各地の貴重な記録映像を見ながら語り合う連続上映会が開催されます。お誘い合わせの上、ぜひお越しください!
▼日時:2016年12月2日(土)~8日(金)連日19:00~
▼チケット:特別鑑賞券2,000円(当日2,200円均一) 3回券 5,400円

*詳細はECフィルムのサイトをご覧ください。http://ecfilm.net/show/pole2-2

【プログラム】
▼12月2日(土)ノーバナナ、ノーライフ!〈食べる・飲む・効く、バナナの世界〉
佐藤靖明(民族植物学)/ 小谷真吾(生態人類学)/ 小松かおり(生態人類学)/ 北西功一(生態人類学)/ 四方篝(熱帯農学)

▼12月3日(日)サルをみる、ヒトをみる〈ヒトとサル、親と子、そしてベッド〉
座馬耕一郎(霊長類学)/椎野若菜(社会人類学)

▼12月4日(月)ヌバ 変わる生活、変わらない魂〈映像の里帰り。スーダンへ〉
村橋勲(文化人類学)/エルヌール・クワ・マッキ(日本在住のヌバ人)

▼12月5日(火)100年後の糸と布〈衣をめぐる人の営みから〉
分藤大翼(映像人類学)/田中景子(ミナ ペルホネン テキスタイルデザイナー)

▼12月6日(水)語りと歌の境界〈音楽行為と身体〉
川瀬慈(映像人類学)/環ROY (ラッパー)

▼12月7日(木)異界との通路をひらく〈音・舞踊・超越性〉
春日聡(映像・音響作家/映像人類学)/久保田麻琴(音楽家/プロデューサー)

▼12月8日(金)踊るチベット〈チベット仏教の贈与儀礼と芸能〉
佐藤剛裕(チベット研究)

*チケット申し込み、お問い合わせ先
ECフィルムについて: http://ecfilm.net/contact
上映会について: fenicsevent@gmail.com

(2)12月9日 FENICS大イベント「フィールドで/教室で 社会問題を考える」@東中野ポレポレ坐

「社会問題」に満ちた、この世の中。そもそも、誰があることを「社会問題」とするのだろう?どのようにして「問題」の当事者になるのだろう?「問題」を現代の若者とともに考えるには、どんな工夫ができるのだろう? 調査地と高校や大学の教室は、今、社会問題を考えるフィールド(現場) になる―

12月09日(土)14:00~17:00
於 カフェ・スペース ポレポレ坐
http://za.polepoletimes.jp/news/
charge: 1500 yen(予約・FENICS正会員)/ 1800 yen (当日)/学生 予約500円、当日800円
申し込み:fenicsevent@gmail.com
電話:090-9395-7755
Web予約:http://fenics-event20171209.peatix.com
子連れOK,ただし念のため前もって上記e-mailか電話にご連絡ください。

[第1部] フィールドで社会問題と出会う

(1)椎野若菜 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
   女性の人生選択の現実に直面する:東アフリカ・ケニア村落にて
(2)横田祥子 (滋賀県立大学)
   国際結婚の花嫁は「買ってきた嫁」?:台湾台中の地方都市にて

[第2部] 教室で社会問題と出会う(トークセッション)
 五十嵐和也(高校教員)、椎野若菜、横田祥子、白石壮一郎(弘前大学)

(3)2018年1月20日 FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ ・サロン@京都大学稲盛
「子育てフィールドワーカーのロールモデルをさぐる」

2018年1月20日(土)11:00~12:30(10:40 開場)
京都大学 稲盛財団記念館 3階 318号室 参加費無料
子連れOKのランチョンミーティングです。昼食持参でどなたでもご参加ください!

フィールドワーカーはどのように将来を思い描けばいいのだろう?いつ結婚し、どのタイミングで子供
をもてばいいのだろう?本サロンでは、育児に奮闘しながら東南アジア・アフリカ・ラテンアメリカで
フィールドワークをつづける5人のフィールドワーカーの多様な生き方に迫ります!

11:00-11:05 趣旨説明
11:05-11:15 これまでのFENICSサロン紹介
11:15-12:15 パネルディスカッション

パネリスト:椎野若菜(東京外大・准教授/FENICS代表),佐藤靖明(大産大・
准教授/FENICS理事),四方 篝(京大・学振RPD),佐々木綾子(日大・助教),
藤澤奈都穂(京大・学振RPD)
12:15-12:30 フリーディスカッション

申込不要ですが、子連れで参加される方は下記までご連絡ください。
お問い合わせ:FENICS事務局 fenicsevent@gmail.com
四方 篝(京大)shikata [at] kais.kyoto-u.ac.jp

*同時開催:民族自然誌研究会第89回例会 「木かげの民族自然誌:茶・コーヒー・カカオのアグロフォレストリー」2018年1月20日(土)13:00-17:00 於:京大稲盛財団記念館3階318号室/参加費無料

託児希望者は、2017年12月15日〆切!!!上記連絡先へお申込みください。

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6.正会員の紹介
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先月に正会員として入会した大学生、椎名基雄さんからメッセージをいただきました。

「FENICSに入った動機は、そんなに大それたものではないのですが、人類学やフィールドワークに関わる場を増やしたかったからです。人類学やフィールドワークに興味があったのですが、大学では専攻できない上に、周りに同じような関心を持つ友人もいなかった中で、昨年度に受講していた椎野先生の授業を思い出しました。

私の関心がある地域は主に東アフリカで、国でいうとウガンダや南スーダンです。学術とはあまり関係のない本の中でですが、これらの地域に住む民族がほんのすこしだけ紹介されていて、彼らに興味を持ちました。

FENICSでは、まだ加入したばかりですが、実際のフィールドワークでの現場についてのお話をたくさん伺って、自身の今後に活かしていきたいと思っております。」

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7.FENICSよりHPについてのお知らせ
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このたび,FENICSが毎月発行しているメルマガになんらかの形で寄稿していただいた方々の情報をデータベース化し,Web上のメルマガコンテンツにタグ付けを行い,さらにフィールドワーカーシリーズ本とも関連づけして,寄稿者の貢献度がわかるようにいたしました.旧サイトではシリーズ本の著者情報や地域研究コミュニティを可能にする独自SNSによって同様の機能を提供しておりましたが,その代わりになる改良です.
http://www.fenics.jpn.org/mailmagazine/authors/

こうしてあらためてメルマガへの寄稿者を整理してみますと,総勢100名を超えていました.貢献いただいた皆様方にここより感謝申し上げます.シリーズ本の著者の方の中には,まだメルマガに登場されていない方もいて,そういう方はまだ寄稿者一覧には入っていません.今後何らかの形でメルマガに寄稿していただけるとうれしいです.

システムの機能上は,寄稿者情報として,TwitterやFacebookといったSNS情報などいろいろな項目を付加できます.ご本人のWebサイト情報は所属変更などが結構ありますので,基本的にResearch Mapへリンクさせています.これらの情報は事務局で管理しており,ログインしてご本人が自分の登録情報をいじることはできません.訂正や情報追加などのご要望がありましたら,事務局(query@fenics.jpn.org)までお知らせください.

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以上です。お知らせ、いつでもご連絡ください。発信、掲載いたします。
FENICSと共催・協力イベントをご企画いただける場合、いつでもご連絡ください。
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
http://www.fenics.jpn.org/conatct/
メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/​

 

寄稿者紹介

音声学 at 東京外国語大学 |

第10巻『フィールドワークのDIY』分担執筆者


霊長類学、自然人類学 |

(霊長類学、自然人類学)


ミュージアム研究 |

第13巻「フィールドノート古今東西」執筆者

フィールド:アメリカ合衆国フィラデルフィアほか