FENICS メルマガ Vol.35 2017/6/25

1.今月のFENICS

 沖縄はすでに梅雨明け。夏も少しずつ近づいてきました。 
 先週は曇り〜雨〜曇り、と梅雨空のなか、総会、そしてFENICSサロン@小金井へお出かけくださったみなさま、まことにありがとうございました。「南極兄弟」、「映像のフィールドワーク」から「変人類学」、そして「世界の子育て」談義まで、フィールドワークと広い意味での「教育」、社会を考えるもりだくさんのイベントでした。あらためて、「フィールドワーク」のもつ多岐にわたる「学び」「思考する」機会、それが実社会に深くつながっていることを確信した次第です。

参加者の半数を学生たちがしめ、階段を上ったり降りたりする子どもたちが、ときおり話者の話を階段から覗いている雰囲気は和やかでとてもよかったです。
フル参加してくださった方は2時から8時まで、お付き合いをありがとうございました。時間を忘れる、刺激いっぱいの、明るいとてもいい空間でした。会場では、7巻『社会問題と出会う』が初披露、販売されました。

 総会についてもご参加、ご意見をありがとうございました。ご欠席の方ともメールのやりとりをさせていただき、参考になりました。まだ、お返事がしきれておらず失礼しておりますが、今後ともFENICSのご支援、そしてご活用をお願いいたします。
 また詳細は参加の正会員よりレポートもいただける予定です。

 7巻『社会問題と出会う』(白石壮一郎・椎野若菜編)が販売開始!会員特典は通常は15%引きのところ、新刊8月まで2割引があります。内容についての紹介、本号で白石さんよりご寄稿があります。
 ウェブでのご登録済みの会員のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい!

 6巻『マスメディアとフィールドワーカー』は編集の最終段階、来月早々から注文受付が始まります!お楽しみに!

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(的場澄人)
3.フィールドワーカーのおすすめ(白石壮一郎)
4.イベントリポート(向後紀代美)
5.今後のFENICSイベント
6.FENICS会員の活動

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2.私のフィールドワーク
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ただいまグリーンランド観測中
的場澄人(12巻編者・地球化学・北海道大学低温科学研究所)

 グリーンランドの80%を覆う氷床は、近年、「地球温暖化」のため質量が減少してきている。そのプロセスは単純ではなく、その実態の解明のために各国がグリーンランド氷床の各地で観測を行っている。日本は、2012年6月に気象研究所、極地研究所、北海道大学などが協力し、グリーンランド北西部の氷床上に観測サイトを設定し、高さ6mの自動気象観測装置(以下、気象測器)を設置した。

その場所は、その観測プロジェクトの名前からSIGMA-Aサイトと呼ばれ、2012から2014年の夏には毎年観測キャンプを張り気象・雪氷の観測行ってきた。また、気象測器で測定された気象データは人工衛星を通して、設置から5年間、毎日日本に送られている。SIGMA-Aサイトは、冬季に降り積もった雪が夏に融けきらずに年雪が積もっていく地域(涵養域)にあり、気象測器は年々50-70cmずつ埋もれていってしまうため、定期的に支柱を継ぎ足してく必要がある。支柱を継ぎ足したのは2014年なので、かなり埋もれていることが予想されていた。今回の観測の最大のミッションは、気象測器の支柱を1.5m継ぎ足すことだ。

 5月下旬、グリーンランド北西部のカナック村に到着し、観測資材や食料の準備をした後、ヘリコプターをチャーターしてSIGMA-Aサイトに向かった。予算は往路2便、復路2便しか都合できなかったため、ヘリコプターの中は、観測メンバー(6名)と観測機材、食料、燃料で満載だ。約1トンの荷物を運び込んで、氷床上にテントを張って観測キャンプがスタートした。気温はマイナス10度程度と快適だった。

 気象測器は前回より1.2m埋まっていた。風が穏やかになった観測3日目に気象測器の立て直しを行った。高さ4mの三脚を作りチェーンブロックを吊して、気象測器を根元から引っこ抜いた。一旦下ろして横にねかせ、センサーを交換した後、支柱を一本継ぎ足し、チェーンブロックでさっきより1.5m高くつるし上げ、元の支柱にはめ込み完了。文字にするとあっという間だが、丸一日がかりの作業だった。当然、重機などは持ち込めないから、全ての作業は人力で行わなければならないし、人も6人しかいないので、始める前に何度も議論をし、作業を確認した。無事やり遂げた時は、ほっとした。

気象測器の立て直し直前の気合いの入った観測メンバー

 今回の観測には、もう一人仲間がいた。1歳のグリーンランド犬のカンマだ。最近、カナダからオオカミが渡ってきて、そのオオカミから逃げて移動しているトナカイやジャコウウシを追いかけてシロクマも移動しているから、観測中に遭遇する危険性が高いと現地の人から聞き、番犬として連れてきたのだ。幸い、シロクマとの遭遇はなく、突然連れてこられてカンマは迷惑だったかもしれないが、安らかな眠りと日々の癒やしを得られたのはカンマのおかげだった。

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3.フィールドワーカーからのおすすめ
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古今書院『社会問題と出会う』(100万人のフィ-ルドワ-カ-シリ-ズ第7巻)を編者より
 白石壮一郎(1巻・7巻編者 社会学/人類学 弘前大学)

フィールドワーカーたちの成果を、分野を越えて共有する古今書院のシリーズ「100万人のフィールドワーカーシリーズ」。
第7巻は、「社会問題」をフィールドワーカーならではの視点から捉えていくプロセスが主題です。文化人類学、社会学、地域研究、歴史学などを専門とする11人の著者が書き下ろしたフィールドワークによる事例研究集です。論文集ではなく、各著者が調査の経過にしたがって問題意識を育てていく様子が描かれます。

フィールドワークによる事例研究成果の利用について、重要な提起もしています。それは、高校生の総合学習や大学1年次教養科目(学部共通あるいは全学共通)などのアクティブ・ラーニングの教材に、というものです。

多くの総合大学で、教養教育改革がすすめられています。そのなかで、アクティブ・ラーニングやPBL、地域との協働を掲げた学部共通・全学共通の科目の新設や改革などのFDに取り組んでいるところあるかと思います。こういう新設科目で困るのはコンテンツです。使えそうな市販の教材は少なく、作成コストは大きい。FDや学務委員などの集まり、知り合いの先生でそうしたことに取り組んでいる方にご推薦いただければさいわいです。

フィールドワーク事例調査の成果を、もっと社会調査教育の外へ。この本の提起についての詳しい内容は、以下の古今書院さんwebサイトにて、本書の「目次」、「イントロダクション」、「補章」内容が立ち読みできます。
http://www.kokon.co.jp/book/b288105.html

フォローアップ企画として、7月以降に、この本のいくつかの利用レポートを、順次古今書院さんのHPやFENICSのHPに紹介していく予定です。もちろん、みなさんからの利用レポートもお待ちしておりますので、ぜひお寄せください。
soichiro@hirosaki-u.ac.jp
fenicsevent@gmail.com

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4.イベントリポート*会員より*
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「フィールドワ―カーとライフイベント:アフリカ篇」に参加して
向後紀代美(地理学・元東北学院大学教員 2016年度より会員)

これこそ、私が長いこと待ち望んでいた本「女も男もフィールドへ」を読んでそう思った。その中心人物である椎野若菜さんが主催される会(FENICS)が開かれるというので神奈川県から長野市の信州大学に駆けつけた。70代半ば、最近は夜の外出も控えているので、久しぶりの遠出である。

 アフリカ学会も開催されていたキャンパスは、緑の木影にベンチが置かれている気持ちの良い空間。5月20日(土)午後、早めに着いた私は本屋のブースをのぞいてみた。そこには私の専攻である地理学でおなじみの古今書院のコーナーがあり、関さんがおられた。聞けば彼がこの「100万人のフィールドワーカーシリーズ」の担当者だというではないか。私は月刊「地理」に書評を連載していたことがある。さらに親しみを感じて、いざ会場へ。

 話者1の四方篝さんの話「フィールドに行けないフィールドワーカー」は聞くも涙。「よくがんばったわね」と思わず声をかけたくなった。話者2の椎野若菜さんの話は、いかに周囲の人を巻き込んで、子育てと研究を両立させてきたかの苦労が語られた。単に学会に参加するのではなく、主催までしてしまうのだから、そのエネルギーには頭が下がる。私も40年以上前、子育てがきっかけで夫と私の人生がちがってしまったことに納得できず、生まれたばかりの長女を抱えて、ロンドンからアイスランド、米国を経由、地球を半周して帰国したことを思い出す。その後、国際地理学会のジェンダー部会に何回か参加。しかし学会を主催するほどのエネルギーは余っていず、一人で参加するのが精一杯であった。
その会で話されていたのが、女性だけでなく、地域や人種の差別もあるという広い視野にたつものであった。

パネルディスカッションでは山極寿一さんや木村大治さんの男性の立場からの話もあり感動的であった。相手の立場を思いやる「想像力」の豊かさ。これこそ大切なこと。私の尊敬する女性研究者の中根千枝さんが「タテ社会の人間関係」という本を出され、今も売れている。
これからは「よこ社会」をめざすべきではないだろうか。男性の位置に女性が代わるのではなく、あらゆる人の多様な生き方が認められる社会が良い。 会が開催された部屋は数十人の人で満杯になった。新しい社会への一歩がはじまっている。

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5.今後のFENICSイベント
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FENICS協力のもと、東京外国語大学で12巻『女も男もフィールドへ』に関する、「若手研究者キャリア形成支援セミナー」が開催されます。
西関東の方々、学生さんにご周知ください。

「あなたもできる!子連れフィールドワーク実践ノウハウ」
配布用pdf → (クリックしてください) 2017.7.11外大セミナー チラシ

日時:7月11日(火)15:00-16:30
場所:東京外国語大学 研究講義棟1階 110教室
http://www.tufs.ac.jp/access/

 演題:
「フィールドワークで鍛え、育児で磨く〜「個性」と「事前準備」の重要性〜」
久世濃子氏 (日本学術振興会特別研究員RPD/国立科学博物館 霊長類学)

「子連れ国際学会、フィールドワーク:子どもの成長にあわせ調査スタイルを変える」
椎野若菜氏 (東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 社会人類学)

※ご参加をお待ちしております。(事前申し込みは不要)

連絡先:fenicsevent@gmail.com

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6.FENICS会員の活動
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(1)増田研さん(2巻4巻編者)は、いつも長崎大でアクティブにアフリカに関するイベントを企画したらっしゃいます。
下記、長崎近辺の方はぜひお出かけください。

現代アフリカ社会論(長崎大学多文化社会学部)では、6月27日に外務省のアフリカ専門官である早川尚宏氏をお招きし、特別講義を実施していただきます。

長崎大学長崎大学多文化社会学部
32教室
14:30〜16:00

連絡先:Ken Masuda <ken-m@nagasaki-u.ac.jp>

(2)星泉さん(言語学、チベット)が中心の企画展示です。

企画展「ヤクとミルクと女たち――チベット牧畜民のくらし」

   開催日:2017年6月8日(木)〜 2017年7月2日(日) (水曜定休)
   開催時間:11:00- 22:00
   会場:タシデレ チベットレストラン&カフェ(東京都新宿区四谷坂町12-18 四谷坂町永谷マンション 1F)

標高3,500メートルほどのチベット高原。
電気も水道もガスもないけれど、ヤク(毛の長い牛)や羊とともに豊かなくらしを営んでいる人びとがいます。
しぼりたてのミルクをたっぷりいれたお茶、濃厚なヨーグルト、新鮮なバター、そして干しチーズ。

そこにはミルク中心に回っているくらしがあり、手仕事のひとつひとつに女性たちの知恵が詰まっています。
そんなチベットのくらしを知っていただこうと企画した本展では、現地に通い続けた研究者ならではの豊富な写真や解説とともに、
ヤクや羊の毛織物、ヤクのしっぽのはたきなど、触ったり匂いをかいだりしていただける展示もご用意しました。
チベットを五感で感じる企画展、ぜひお越しください。

※本展は2017年2月13日から3月11日に開催した「チベット牧畜民の仕事展」の巡回展です。

入場料:無料(カフェ・レストランスペースにつきワンドリンクご注文いただきます)
問い合わせ先:タシデレ (03-6457-7255)

使用言語:日本語
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以上です。お知らせ、いつでもご連絡ください。発信、掲載いたします。
FENICSと共催・協力イベントをご企画いただける場合、いつでもご連絡ください。

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メルマガ担当 椎野(編集長)・澤柿
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