FENICS メルマガ Vol.3 2014/10/25

1.今月のFENICS
FENICSメルマガ第3号をお届けします。
それでは本号の目次です。

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(的場澄人)
3.フィールドワーカーのおすすめ(丹羽朋子)
4.フィールドごはん(阿児雄之)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動

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2.私のフィールドワーク
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海氷上の霜の華・フロストフラワー(的場澄人)

今年2月、海氷上に成長する霜の結晶「フロストフラワー」を観測するために、グリーンランド最北の村シオラパルクを訪れた。フロストフラワーは新しく薄い海氷上に形成し、その表面には海氷上から浸みだした濃い海水から析出した 塩(えん)が付着している。興味深い点は、フロストフラワーには海水に含まれる成分が数倍程度濃縮されていること、そして、その化学組成比は海水比と同じではなく、選択的に成分の濃縮が起こることである。フロストフラワーはある程度成長すると風によって破壊されて大気中に飛散する。このときに、海水由来の化学成分を高濃度で大気中に放出する。これらのプロセスに伴う化学成分の変質を把握することが研究の目的である。これらのプロセスが解明されても、今のところは、地球温暖化の予測に一石を投じるとか、大気中の未解明な物質の起源が明らかになるとかのような、地球規模にインパクトのある結果が得られるのではなく、複雑な地球上の物質循環の中の一プロセスが分かるだけなのだが、いろいろな大気中の化学反応プロセスに繋がる可能性もあり、面白く取り組んでいる。
今回の観測では、海氷上に形成しているフロストフラワーの観測を私が、大気中に飛散した後のエアロゾルの観測を福岡大学の原圭一郎が担当し、観察と試料の採取を行った。フロストフラワーが形成している場所へは、北極地域での探検 活動を20年近く続けている山崎哲秀が操縦する犬ソリで向かった。フロストフラワーは、凍ったばかりの薄い海氷上に形成するので、直接観察するためには、重 量が軽く機動性に優れた犬ソリは有効な手段だ。気温マイナス30度の中、村から 一時間程度犬ソリで走ると、前の週に凍ったばかりの海氷の上が数センチくらいのフロストフラワーで覆われている場所にたどり着いた。その景色は、真っ白な 花が咲いている花畑の様だ。フロストフラワーを舐めてみると、とても塩辛い。 さらに犬ソリで沖へ走ると海氷の縁のところには、凍ったばかりの海氷の上に小さなフロストフラワーができはじめていた。夢中で観察し採取していたら、突然ふわりと目眩のように揺れるように感じ、我に返った。数センチメートルの薄い 海氷に乗ったため、自分の重みで海氷がたわんでいたのだ。氷が割れなくて本当によかった…
現在、フロストフラワーとエアロゾルの化学分析を進めているところで、それぞれの結果を摺り合わせて解析できるのを楽しみにしている。
フィールドへの行き方
コペンハーゲンから飛行機でカンゲルスアーク(4時間)、イルリサット(1時 間)へ。翌日、飛行機でカナック(4時間)へ。カナックからはヘリコプター (30分)または犬ソリ(6〜8時間)でシオラパルクへ。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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郭慶豊『陽歌陽図』(漢聲雑誌社)
(丹羽朋子)

私がフィールドワークに必携するのは、『陽歌陽図』という小さな本だ。版元の「漢聲雑誌社」は、中国や台湾の民俗文化や歴史、建築等の調査記録を美しい図版やデザインで編集した本で世界的に知られている。
だが『陽歌陽図』は漢聲の他の詳細なフィールドワーク本とは趣が異なる。ほぼ正方形をした本書の紙面は色鮮やかな地色一色に刷られており、たどたどしく線描された手描きの図案が、1ページにでーんとひとつだけ配置され、下に図の名称が添えてある。総数は167図。ただそれだけなのだが、気が利いた装丁で本当に美しい本なのだ。
各図案は、私の調査地である陝西省の黄河流域で、毎年旧暦の正月15日に行われる秧歌(ヤンガー)という歌舞の隊列の動線を描いたもの。いわば隊列の抽象的な俯瞰図であって、実際に秧歌を間近に見てもその形に気づくのは難しい。著者の郭慶豊はこの地域出身の画家で、故郷の村々で自らも秧歌隊に加わりながら、吉祥の意味をもつ各種の隊列図を収集して回ったのだという。
この本、図案のページに余計な説明がないのがいい。フィールドで調査につまずいた時にふと開くと、自分の目にはまだ見えていない人々の関係や社会構造を、ちょっと俯瞰して考えてみようという気にさせてくれる。この本を現地の古老に見せると、さまざまなイメージが湧くのか、思い出話から伝承まで話に花が咲く。フィールドでの息抜きにも、紙の美しい本好きにもおすすめの一冊だ。

*日本では古書店「2手舎」が漢聲の本を多く扱っており、以下のサイトには『陽歌陽図』の中の写真の他、漢聲の本を紹介した動画なども見ることができる。
http://www.nitesha.com/?pid=55894968
*本書は台湾の漢聲雑誌社のサイトから購入可能。
http://www.hanshenggifts.com/front/bin/ptdetail.phtml?Part=MAG118&Category=100031
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4.フィールドごはん
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「常温持ち歩きのゴミ少なめごはん」
(阿児雄之)

フィールドごはん。
異国の味わったことのない料理のお話を通じ、様々なフィールドワーカーの生活を追体験できる楽しい響きですね。
では、私のフィールドごはんはどんなものでしょうか?
はい。私の調査で、お昼の定番は魚肉ソーセージとおにぎりです。あと、一口羊羮を準備。
このフィールドごはんの利点は、「ゴミが小さく纏まること」、「片手で食べられること」、「日本のコンビニなら何処でも手に入ること」。
私の調査は、電気探査法などを利用して地下に埋まっている遺跡を掘ることなく探すことです。例えば、古墳のどこに埋葬施設があるのかを探します。機械を使って調査するので、一秒たりとも計測装置を止めたくない。昼食中もできれば、機械だけは動かし続けたい。朝と夜は宿でしっかりとれる。その結果、行き着いた先が、魚肉ソーセージとおにぎり!
みなさん、明日から鞄には魚肉ソーセージとおにぎり、そして一口羊羮を忍ばせてみませんか?
(写真は京都府の古墳での電気探査風景)

電気探査風景

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5.今後のFENICSイベント
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FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ出版記念会
FENICS設立・100万人のフィールドワーカーシリーズ出版記念会
「現場の知(フィールドの知)をつなごう」
(詳細はFENICSのウェブサイトへ!http://www.fenics.jpn.org/)

日時:2014年11月1日(土)13:30開始(13:15開場)、16:00終了
(閉会後、近くで親睦会を開く予定です)
場所:清澄庭園 大正記念館(東京都江東区)
http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index033.html
都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線「清澄白河」(E14・Z11)駅下車 徒歩3分
会費:予約1500円(軽食つき)当日2000円
お申し込み:fenicsevent@gmail.com

**プログラムの予定**
1部 フィールドワーク――学際・協働
フィールド写真スライドショー・交流の時間
2部 映像――記録・表現・発信

私たちの団体の活動と「100万人のフィールドワーカーシリーズ」の全体を紹介するとともに
メンバーの交流を図る機会を企画しております。
詳細については後日お知らせいたします。
ぜひみなさま万障お繰り合わせの上、ご参加いただきますようお願い申し上げます。

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6.チラ見せ!FENICS
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百万人のフィールドワーカーシリーズ5巻
『災害フィールドワーク論』(木村周平・杉戸信彦・柄谷友香編)

「大地震の歴史とメカニズムを捉える-活断層への地理学的アプローチ」
(杉戸信彦)

筆者はいま冬の太平洋にいる。清水港を出て4日目。南海トラフの海底活断層調査を終えた帰り道である。16時を過ぎた。海況悪化で現場を離脱して10時間になる。明朝、横浜港に入ることになっている。
船室の丸い小窓をのぞくと、灰色の雲が低く一面にひろがっている。向かい風が強く波が高い。7ノットで走る499トンの船体は大きく揺れ、数メートル跳ねてはゆっくり沈みこむ。波しぶきが小窓を何度も洗う。陸はまだみえない。もうすぐ日が落ちる。
カーテンを閉め、ベッドに横たわる。背中の下はすぐ海だ。
しかし不安はない。むしろ船体が沈みこむときの感覚が心地よい。まるでやわらかいクッションにふわりと着地するようだ。海がわが身を受けとめてくれる。モンゴル活断層調査のテント生活中、背中に感じた大地のぬくもりを思い出す。
海の調査は今回が初めてである。これまで陸の活断層を調査してきた。あらためて考える。海には海の、陸には陸のやり方がある。共通する部分もある。筆者にとって研究のバックボーンといえるものは何だろうか。
思いをめぐらすうち、りんご園に囲まれたある発掘現場を思い出していた。…………

(5巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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11巻『衣食住からの発見』執筆者のお一人久保忠行さんが
9月に自著を出版されました。ご自身から紹介文をいただきました。

『難民の人類学 タイ・ビルマ国境のカレンニー難民の移動と定住』
久保忠行 著  ISBN 978-4-87950-615-3 C3039
価格3000円(本体)+税 2014年9月

難民の人類学 タイ・ビルマ国境のカレンニー難民の移動と定住


本書は、タイ、ビルマ(ミャンマー)、アメリカでの複数地でのフィールドワークをもとにビルマを出身とする難民(カレンニー難民)の移動と定住プロセスについて著したものである。人が難民となるプロセスは、避難先への逃亡としての〈分離〉、難民生活としての〈過渡〉、そして新たな社会や国家への再編としての〈再統合〉と「儀礼の過程」になぞらえられる。本書は、3部構成でそれぞれの局面を民族誌的に明らかにし、3局面の連続性をとらえる。また難民問題の「解決策」として、難民の地域統合、第三国への再定住、そして帰還の3つがあげられるが、第三部では、この3局面を、タイへの定住、アメリカへの再定住、そしてビルマへの帰還の可能性として論じている。

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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
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