FENICS メルマガ Vol.24 2016/7/25
1.今月のFENICS
7月ももう終わりに近づきました。授業も終わり、夏休みに突入、すでにフィールドにお出かけの方もいらっしゃるようです。
FENICSでは今年度の大イベントとして、14巻『フィールド写真術』の発刊にちなんだ(出版まぢか!!)写真展とイベントを同時開催することに決定しました。ぜひとも、フィールドでいい写真を撮ってきてください。
また、初めての試みとして、フィールドでのあらゆる「音」も集めることにしました。雑踏の音も、日常生活の音も、風の、雨の音も、土地によって異なります。ぜひとも皆さん、あなたのフィールドの音を持って帰ってきてください!!
詳しくは、下記をご覧下さい!
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(杉本浄)
3.フィールドワーカーのおすすめ(椎野若菜)
4.フィールドごはん(吉田美冬)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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「佐渡島」
杉本浄(インド近現代史、FENICS1巻執筆者)
もともと私の専門研究はインド近現代史(特に東部のオディシャー州)である。つまり歴史学をディシプリンとし、基本的にフィールドワークをしない文書館通いの史料屋である。第1巻『フィールドに“入る”方法』の中の共著で著したように、フィールドワーカーでもない私が、ひょんなことから門田岳久さんと小西公大さんと出会って、佐渡島で廃校プロジェクトを一緒にはじめることになった。しかも佐渡島は私の故郷でもある。二重にやりにくい。
佐渡は高校卒業後、逃げるように去った場所だった。ただただ、島の持つ雰囲気が嫌だったのである。とはいえ、高校時代の品行はいかにも酷く、成績だって下から数えた方が早かったわけで、自分のダメさを生まれた場所のせいにして、さっさと出ようとしたと言った方が適切かもしれない。
2009年の予備調査、翌年からの本調査がはじまってみると、佐渡は適度に広いためか、それほど昔の知り合いに会わなかった。それでも調査が長引くにつれて、やっぱり同級生に再会したりする。たとえば高校時代の同級生F君。彼の子供たちが廃校舎を活用した催しである夏学校に来てくれ、2年ほど前に始まったもらい湯では学生たちが彼の家でお世話になった。再会してしばらく、どう声をかけてよいのかわからず、笑顔で見つめ合う?だけだった。お互いの「今」の役割がかつてのものとだいぶ異なるのである。ぎこちない関係が3年ほど続き、以前のように呼び捨てで名前を言えたのはようやく昨年のこと。先日はFacebookを通して、彼の集落で行われる夏のお祭りに学生と一緒にお邪魔すると伝えた
現在、廃校プロジェクトはその内容を発展させながら、7年目の夏調査に向けた準備が進む。教員、大学院生、学生たちが一緒になって複数のテーマの下で調査を行う。当初からあった廃校舎の再利用をめぐる活動と研究に加え、博物館活性化事業、祭りの映像化、各種ボランティア、さらに新たにはじまる民俗学者・宮本常一が写した写真の分析などが予定されている。
おかげさまで、プロジェクトが始まって以来、かつてのように実家に帰ると、ほぼ寝て過ごすという習慣はなくなった。支えてくれる人々との出会いもあった。調査対象も広がった。土地の持つ歴史の深さを思い知らされた。やりたい研究もいくつかある。しかしながら、はじまった当初の「後ろめたさ」や「やりにくさ」が払拭されたかというとそうでもない。それは確かな原点としていまだに自分の胸中にあり続けている。
フィールドへの行き方:
新潟港からカーフェリーで2時間半、高速船で1時間ほど。両津港着。
直江津港から高速フェリーで1時間40分。小木港着。
佐渡の真野湾
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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椎野若菜(社会人類学、FENICS代表)
2012年に出産してからは、毎年フィールドであるケニアとウガンダの首都に行くにも子連れで行くための準備でいっぱいいっぱい。自分のために音楽を準備する余裕が全くない代わりに、頭のなかで無意識に流れている音楽は子どもが繰り返し見る‘Thomas & Friends’にでてくるいくつかのナンバーという始末。
90年代後半、ケニアのルオ村落で調査を始めた院生の頃はフィールドで聞く音楽も準備していった。アフリカの人は音楽が大好きだ。マタツ(乗合バス)は大きなスピーカーをつけているものも多く、走るオーディオ?というほど、大音量で走る。忘れられないのが、ヴィクトリア湖畔の田舎町を走るマタツ(乗合バス)の助手席に座った際、敬愛する坂本龍一の音楽の入ったカセットテープを流すと、繊細で透き通る音のハーモニーに私だけが吸い込まれ、ふと我に返るとマタツのなかはしらけていたことだ。彼らにとって音楽とは、身体が自然に動くビートなのだ。
そうしたノリでいえば、日本に留学していたアフリカ人が再生リストに入れてくれた2010年のワールドカップのテーマソングであるシャキーラのwaka waka,は、しばらくの間、私の名前(wakana)と呼んでいるかのように気分をアゲテくれた。せっかくなら、南アのzulu民族のポップスならよかったのに、と思いつつ・・
Shakira – Waka Waka (This Time for Africa)
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4.フィールドごはん
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吉田美冬(地域研究、8巻執筆予定)
砂漠に生息するアフリカゾウを観察するために、私の選んだ調査地は、ナミブ砂漠の北部、砂と岩山に囲まれた牧畜民ヒンバの村であった。降水量は年間50mmを下回る。農業はできない。
 そんな砂漠の村でのごはんは粥だった。大量のお湯を沸かし、トウモロコシ粉を加え、さらに油と塩を混ぜて練ったものが主であり、これに砂糖をかけて食べる。他に野菜やソース、おかずはない。シンプルであるが、これはこれで美味しい。しかし、トウモロコシ粉が不足すると、小麦粉で粥を作られることがあり、これは焼く前のホットケーキといった感じで無理やり飲み込まなくてはならなかった。
 こうした食材は全て村一軒の食品・雑貨店で購入するが、ここの仕入れが滞ると、ごはんの無い日もあった。粥と砂糖、ときどきご飯なし、稀に干し肉、という村の生活の中で、1年に一度だけ豪華な食事にありつける日がある。クリスマスである。マカロニを原型をとどめないほどグズグズに茹でたものに、大量のマヨネーズとケチャップをかけたもの、そして牛肉の煮込み。その夜は、村で最高のごはんを写真を撮るのも忘れ、村の子供達と争うように夢中で食べてしまった。
粥と砂糖
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5.今後のFENICSイベント
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(1)FENICSイベント開催日決定! 11月26日@吉祥寺 武蔵野公会堂
フィールド・フォトグラフィーの祭典
Festival of Field Photography (FFP)
FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ(全15巻)もいよいよ7冊め、9月には14巻『フィールド写真術』(小西公大・秋山裕之編)が出版されます!
世界の人間の暮らしを住み込んで学ぶ文化人類学、人間の記憶を写真や映像で辿る情報学、里山から雪山、氷上まで渡り歩き、ときにヘリ、ドローンを使って撮影する自然地理学・雪氷学、チンパンジーのベッドづくりを観察して、自分も実際に寝てみたりする霊長類学者・・・フィールドワーカーは水中から樹上、氷上、空中、とあらゆる場所で観察のために撮影を行います。プロカメラマンが撮る写真とは違う、フィールド・フォトグラフィーの魅力とは何か?また、写真研究者はフィールド写真をどう評価するのか?フィールドワーカー×写真研究者の小林美香さん(東京国立近代美術館客員研究員)によるトークをお楽しみください。
あわせて、フィールド・フォトコンテストと、ギャラリーでの展覧会を開催します。フィールドで撮った写真を、10月17日まで募集します!写真研究者、12巻編者、FENICSコアメンバーで選考し、当日にギャラリーで展示を行います。また、おって都内のギャラリーでも展示予定です。ふるってご応募ください!(詳細は(2)をご覧ください)
お子様用の部屋も別途準備しています。是非とも、ご家族でいらしてください!!
日時:2016年11月26日(土)
   14:00~16:30 (13:30開場)
場所:武蔵野公会堂 第一・第二会議室
   JR吉祥寺駅南口から徒歩2分。井の頭公園に向かう途中
      子供部屋:第二和室(会場のとなり)
プログラム:
   フォトギャラリーにて来場者が展示写真にコメントやマークをつけ評価
   *トーク*
   松本篤 写真が生みだす記憶とつながり(NPO法人remo、情報学)
   小西公大・杉本浄・門田岳久「宮本常一が撮った佐渡:社会開発とフォトグラフィーの接合」(社会人類学、歴史学、民俗学)ほか
   *座談会*(小林美香×フィールドワーカー)
(2)初!FENICSフォトコンテスト!
 本FENICS企画では、フィールドワーカーによる写真を、フィールドワーカー同士で、また一般の方、そして写真研究者に見てもらう機会を設けます。あなたがフィールドで撮った写真は、どのように読まれるのだろうか?研究との関連、被写体にアプローチしたきっかけや思いも付して、ぜひともご応募ください!
 小林美香さん(東京国立近代美術館客員研究員)、14巻編者、FENICSコアメンバー数人にて選考、入選者の写真は、11月26日のFENICSイベントにてパネル展示します。また別途、都内のサロンにて展示予定です。
締切:10月17日(月)
提出内容: 各写真について、下記の情報をご記載ください。
A. 作品画像 (25MBまで) ひとり5枚まで
B. 撮影時の基本情報(カメラ、レンズの情報、撮影場所、撮影年)
C. 各写真についてのタイトルと解説(300字以内)。何を目的で撮ったのか、被写体と撮影者の関係など撮影時の情報
D. プロフィール(氏名、専門、初めてそのフィールドに行った年など)
E. 「人」「風景」「モノ(遺跡を含む)」分野いずれかを選択。
送付先: 上記提出物A,B,C,D,Eを記載のうえ、データをメールでfenicsevent@gmail.com宛にお送りください
(3)FENICS企画:フィールドで「音」を集めて来よう!
 フィールドでのあらゆる音を、集めてきてください。
 音を集めて、作曲家に、映像作家に、自分のフィールドの音を使ってもらおう!
 詳細はまた案内します。
(4)20世紀の映像百科事典「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ」(EC フィルム)のウェブサイトをリニューアルしました。
今まで印刷物でしか検索不可能だった「民族学」「生物学」「科学技術」シリーズのタイトルリストをデジタル化、ウェブ上での検索が可能となり、デジタル化済みデータの貸出も始まります。
新サイトは上映会や展覧会などでの活用例、多彩なフィールドで活躍されている方々の応援コメントやエッセイなど内容も盛りだくさんですので、ぜひ一度ご覧ください。
これを機に、ECフィルムをより多くの人に開き、映像を見ながら語り合う多様なプラットフォーム作りなど、今だからこそ出来る様々な利用方法を開拓したいと思っております
面白い企画その他、アイディアありましたら、当サイトを通じて(あるいはFENICS丹羽宛pengzi_niwa@ybb.ne.jp でも)、お気軽にご連絡ください。
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第13巻
『フィールドノート古今東西』(梶丸岳・丹羽朋子・椎野若菜編)
「植物学者のフィールドノート」
(倉田薫子)
 現地に入って、まずは文房具屋でフィールドノートを購入した。100枚リング綴じで5mmの方眼が、ここのお国柄らしい。表紙には漫画チックなカメの絵が描いてあるのだが、勝手な解釈でガラパゴスゾウガメだと思うことにした。これで『ガラパゴス(ガラパゴ:スペイン語で「カメの意)感』いっぱい、大満足である。
 ノートが準備できたら、研究構想の全体像をラフに書いていく。…
(13巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、HPの左バーFENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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編集部が注目した活動です、第6巻『メディアとの交話』執筆予定の鈴木和歌奈さん。
大阪大学で、学生主催のワークショップを開催。科学の実験室におけるロボット、細胞、実験装置などと人間の関係を微細に検討することで、人間ー非人間の関係を再考するとともに、新しい実験室研究の可能性を探索したいと思います。発表者は、Asli Kemiksizさん(大阪大学博士課程)、鈴木和歌奈さん(京都大学PD研究員)、Grant Otsukiさん(筑波大学助教)です。
ご関心のある方はぜひご参加ください。ワークショップの1週間くらい前に原稿をまわしますので、参加される場合は鈴木さんまでメールを。
TRAWS (Trans-Regional Anthropology Workshop) Vol. 8
Rethinking human and non-human relationship:
Three ethnographies in contemporary Japanese laboratories
Venue: Room 106, East Wing, Graduate School of Human Sciences, Osaka University (Suita campus)  (http://www.hus.osaka-u.ac.jp/en/access.html)
Date: 30th of July 2016 (Sat) 14:00- 17:10
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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/