1.今月のFENICS
 日本の参院選もいよいよ近づき、イギリスはEU離脱と決定、と町もTVもネット上も激しく動いています。
またフィールドワーカーのみなさんは、夏のフィールドの予定を決められた頃でしょうか。
 12巻『女も男もフィールドへ』、もうすでにお手元にございますか?調査者のジェンダーの問題、子持ちになってから、どうフィールドワークを継続するか?という問題、、海外赴任や出張も多くなっている現代、けっして研究者フィールドワーカーのテーマではありません。
ぜひともお手元に!
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 FENICSは、今月11日(土)にNPO法人となって二回目の総会を開催しました。FENICSを立ち上げたコアメンバーを中心に、関東近辺のみなさま、ご参集ありがとうございました。
若手研究者のほか、音楽家、TVプロデューサーもいらして、こじんまりした、顔のみえる、いい会合でした。今後の企画のヒントもいただき、感謝しております。
 同日開催のFENICSサロンでは、自然地理専門の澤柿教伸さんによる「2015年ネパール地震の緊急学術調査とドローンの活用等について」のお話。人文系と異なり、災害が起きたときの、世界の自然科学者たちの迅速な協力対応、ファンドの申請、業者と交渉し安価でドローンを作成、あたらしいシステムを使った情報処理、クラウドファンディング・・・と刺激たっぷりのお話でした。また、自然科学者と人文系研究者の連携の必要性もはっきりと現れた事例でもありました。
 さて、NPO法人となりましたFENICSは、その運営を年会費(1000円)と寄付、賛助会員の会費を主に、ほか助成金などでまかないたいと考えています。年会費をお支払いいただいている正会員は、議決権があり、運営にもご意見いただけます。FENICSとしましては、研究費のない地方にいる若手研究者を呼びイベントを実施したいのですが、現在は収入が少なく、なかなか困難です。イベントも東京に集中しがちであることを解消したいのですが、運営上難しいのが現状です。
会費のご協力、なにとぞよろしくお願いいたします。
NPO法人FENICSについて・年会費についてetc↓↓
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(角南聡一郎)
3.フィールドワーカーのおすすめ(高倉浩樹)
4.フィールドごはん(三谷曜子)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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立ち話、坐り話
角南聡一郎(仏教民俗学、13巻執筆者)
 奈良県平野部(国中)で聞き取りをすべく、昔のことをよく知っているという老夫婦のお宅をはじめて訪ねた。無論、事前に自治会長さんを通じてお願いをしておいたのだが、インターホンを押しても反応は鈍い。「自治会長さんからのご紹介でお話しをうかがいに参りました」と再度確認すると、ようやく玄関の扉は開いた。ご主人の話によると、最近は詐欺だとかセールスだとかばかりなので、昼間は知らない人が来ても取り合わないようにと、息子夫婦にきつく言われているのだという。これは極めてフィールドワークには不利な状況である。結局、その時は立ち話で終わった。またある時、県下山間部(吉野)で特に約束をしないではじめてのお宅を訪問した。すると家人のおばあさんが対応してくれた。最初は玄関前で立ち話をしていたのだが、共通の知り合いがいるなど話がはずんだせいか、「まあ玄関口に腰かけてお茶でも飲んでいって下さい」と言ってもらえた。当然ながら、長い時間話をすることができ得られた情報も多かった。これまで平野部ではいきなり訪問しても、玄関口に腰かけさせてもらえる=長い時間話を聞く事はほとんどなかった。しかし、山間部ではまだその可能性はなくもないのだなと無邪気に喜んだ。このようなことがあってからはなるべく立ち話だけでなく、できるだけ坐って話を聞かせてもらえるよう工夫や意識をするようになった。
 私は日本国内だけでなく台湾にも時々フィールドワークに出かける。現在は台北などが多いが、以前はしばしば東海岸へと出かけた。台湾北東部の花蓮市を訪れた時の事、夕方になりその日の宿舎を探していたが、たまたま目についたホテルに泊まることにした。観光客などほとんど宿泊することがなさそうなホテルであったためか、フロントのおばさんに一体何の目的でここに来たのかとストレートに聞かれた。私は「日本人がかつて残した建物や墓を調べに」と答えた。するとおばさんは「それなら是非紹介したい人がいるから連絡してみる」とのこと。何のことだろうと思いながらも、チェックインして部屋でくつろいでいると、部屋電話が鳴った。受話器を取ると、未知の人物から日本語で今すぐにフロントまでおいでとのこと。恐る恐るフロントにいってみると初老の男性、楊先生が待っていた。彼は元中学の数学教師で、現在はリタイアして郷土のことを勉強しているという。日本語世代よりも若いのだが流暢な日本語を話す。「花蓮の刺身を食べましょう」と誘われるままに近くの店に連れていってもらい、刺身とお酒をたらふく御馳走になった。楊先生は「日本人に台湾のことを忘れないで欲しい、台湾の歴史にも興味をもって欲しい」という強い思いがあり、はじめて会ったにも関わらず私を熱烈に歓迎してくれた。さらに地元の郷土史家を紹介してもらい、自ら車を運転してかつて日本人移民がつくった旧吉野村(現花蓮県吉安郷)や原住民の村へと連れて行ってもらった。それは地元奈良県での立ち話、坐り話というレベルではなく、初対面ながらずっと車に乗せてもらいながら、あるいは酒を酌み交わしながらの坐り話であった。楊先生のおかげで思いの外調査ははかどり、さらに色々と勉強させてもらうという濃い数日間を過ごすことができた。
 このような経験をする中で、日本もかつてはこのような出会い、そして坐り話をすることがごく普通にあったのではないだろうかと思った。坐してじっくり相手の話を聞ける、これが聞き取りではとても大切なこととなる。このようなことがあり、私は日本でも相手にできるだけ長く話をしてもらえるよう、信頼関係を築くことができるよう、そして坐して話ができるよう、フィールドワークで心がけるようになったのである。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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高倉浩樹(社会人類学、FENICS15巻執筆者)
かつて現地調査に持って行く本を選ぶことはとても重要な事柄だったことを覚えている。今は、電子書籍があるので、驚く程の本の量をもっていける。おすすめは「青空文庫」である。著作権が消滅した作品や著者が許諾した作品のテキストをインターネットで公開する電子図書館。喜田貞吉・中山太郎などの人類学・民俗学の古典も読める。私が好きなのは明治時代の小説で、旧字体や旧仮名遣いではあるが、新しい紙に印刷されているような見栄えなので不思議な読み心地となる。原典鑑賞とは異なる体験であるが、「古典」という異文化への入り口がずっと近くなる。青空文庫を支えるパブリックドメインの思想は「そらもよう」にあるので読むことをお勧めしたい。もう一つ最近新しい体験をした。朗読CDならぬ朗読端末である。本を音で理解するというのはとても新鮮だった。文書で読みやすい作家がいるが、音読で理解しやすい作家はその文体の構成に特色がある。泉鏡花の「高野聖」の幽玄な世界が音で迫ってくると、艶やかな想像力が刺激された。従来とは異なるメディアで新しい読書体験をする、異文化のフィールドで遭遇できる未知なる自文化なのだと思う。
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4.フィールドごはん
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南極でのごはん
三谷曜子(海棲哺乳類学、12巻編者)
 博士課程1年の時、南極のマクマード基地(アメリカ)でウェッデルアザラシの調査をした。基地の中にはビュッフェがあるが、離れた調査地では自炊である。調査前に食料庫に行くと、コストコにあるような棚にパスタやライス(袋に穴があいていて袋ごと鍋でゆでる)、缶詰など様々なアメリカンな食糧が並べられており、自由に選んで持って行く。パスタの袋の裏を見ると、とうに賞味期限が切れていたが、乾麺だから問題はない。
 調査中の昼ご飯は戸外でスープやエナジーバーを食べる。凍える気温の中での温かいスープやココアはぐっと身にしみるものだった。ちなみにエナジーバーは南極で商品とともに写真を撮ってくることを条件にメーカーから提供されたもので、もちろんみんなで満面の笑みで写真撮影を行った(戸外で)。
 調査地の夕飯は順番で調理し、私の番ではパスタをゆでることにした(ソースは缶詰なので超簡単)。しかしお湯にパスタを入れた途端、湯に入れた先から数cm間隔でパキパキ折れてバラバラになってしまった。越冬経験のあった指導教員いわく、「乾燥しすぎたパスタはお湯に入れるとバラバラになる」とのことで、南極の乾燥度を実感した。そして、沈まない太陽に照らされ、みんなで夕食を囲み、南極の一日は終わるのだった。
mitani_gohan
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5.今後のFENICSイベント
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*7月に、フィールドワークに行かれるみなさんに向け、音の収集をお願いするプロジェクトを始めます!
*今年の年に1度のFENICS大イベントは、写真をテーマに11月26日(土)@吉祥寺に決定!!!詳細は、後日お知らせします!ぜひとも東京@吉祥寺へ!
*最新刊 12巻『女も男もフィールドへ』にちなんだイベントも企画中です。
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第12巻
『女も男もフィールドへ』(椎野若菜・的場澄人編)
「女も男も無意識の思い込みに気づくために」
(長堀紀子)
私は10年ほどライフサイエンスの研究者として研究に従事した後、2年間産学連携行政に携わり、現在は北海道大学人材育成本部女性研究者支援室で、多様な研究者が能力を発揮できる研究環境を構築することを目的として仕事をしている。主に「女性研究者のキャリア開発」と「ワークライフ・マネジメント」に関する取り組みを行っているが、研究者に直接話を聞いて課題を整理し施策に落とし込むのが仕事の流れであることから、ある意味“研究者の研究活動現場をフィールドとしている”といえるかもしれない。ここでは、女性研究者活躍の妨げとなる“無意識の思い込み”について、日々研究者と接するなかで感じたことを述べたい。……
(12巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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正会員の宮本道人さんより、ご連絡いただきました。
ML(announce@fenics.jpn.org)でもお知らせしましたが、とてもおもしろそうな企画です!申し込み、延長していますので、ご興味のあるかた!
【科学技術社会論夏の学校2016開催のお知らせ】
科学を表現する、科学で表現する――科学技術社会論夏の学校2016では、参加者の皆さまとともに、この二つのテーマについて考察したいと考えております。詳細を以下に掲載致しましたので、ご興味のある方はぜひウェブサイトをご覧頂ければ幸いです。様々な分野の皆さまとの理系・文系・芸術系の枠を越えた議論を通し、新しい発見や長く続く繋がりが生まれることを楽しみにしております!
【ウェブサイト】http://natsugaku.jimdo.com/
【開催】2016年7月29日(金)–31日(日)@つくば近辺
【募集対象】学生、研究者、クリエイター、ジャーナリスト、科学・表現に関心のある周辺分野の方(80名)
【参加費】学生:15,000円、一般:17,000円(シングル部屋宿泊・朝食・懇親会費込み)
【申込締切】6月19日(日)⇒26日まで!
【講演について】科学と芸術を横断する作品を作っていらっしゃるスプツニ子!先生、科学・芸術系番組を手がけていらっしゃる村松秀先生、科学とメディア・社会の関係を研究していらっしゃる標葉隆馬先生にご講演頂きます
*お気づきと思いますが、さいきんannounce@fenics.jpn.orgをアナウンス用につくりました。FENICS会員への広報をご希望の場合、ご連絡ください。
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/