FENICS メルマガ Vol.22 2016/5/25
1.今月のFENICS
 夏のような暑さが数日続きました。沖縄はもう梅雨入り。季節の変わり目、学会も多いこの時期です。
 日本地球惑星科学連合の大会が、いま幕張メッセで行われていますね。FENICSの本を、この会場で初めて目にしてくださる方もいらっしゃるようです。今年はどのくらいいるか?
 文化人類学会が今週末、南山大学にて開催されます。古今書院のブースでお目にかかれること、楽しみにしております。
 ご自分が出入りなさっている学会や研究会、イベントのことも、どうぞ折にふれお教えください。分野を横断しているからこそ、の交流がしたいです。
・13巻『フィールドノート古今東西』、もうお手元にありますか?じわじわと話題になってきている?ようで嬉しいです。
まさに分野横断のFENICSならではの1冊となっています。まだみていない方、新刊の2ヶ月が、たいへんお買い得です。もちろんアマゾンでもOK。
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12巻『女も男もフィールドへ』は、いま印刷所にて生産中!週末の文化人類学会に間に合うか!お楽しみに!!!!!
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(星泉)
3.フィールドワーカーのおすすめ(小森真樹)
4.フィールドごはん(丹羽朋子)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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手に宿る喜び
星 泉(チベット語学・言語学)
 私は最近、東北チベットの牧畜民のもとを訪れ、急速に失われつつある伝統的な生活知を記録する仕事をしている。山で牧畜生活を営んでいる人びとや、家畜を手放して町に移住してきた人びとを取材しているうちに、乳搾りや乳製品作りなどに勤しむ女性たちの手の動きの美しさに魅せられるようになった。
 例えば牧畜民はヤクなどの家畜の糞を手で加工して燃料にするのだが、みるみるうちに草地に糞を広げて美しく仕上げていく。糞加工の上手な女性がまたおしゃれ上手だったりする。美意識が生活の隅々までゆきわたっているのだ。不器用な私は、彼女たちの所作を見ているだけでときめきを感じる。
 町に移住すると手仕事の能力を発揮する機会が減ってしまうのだが、持ち前の機転で新たな場を作る女性もいる。例えば十数年前に山を降り、町に移住してきたというドルマさん(50代女性)はヨーグルト作りの達人で(着こなしもうまい)、町の人びとに呼ばれては、出張してヨーグルト作りをしている。私も何度となくご馳走になり、一日の疲れを癒やしたものだ。
 ちなみにチベットではヨーグルトは夏の楽しみだ。脂肪分の多いヤクのミルクで作るヨーグルトは濃厚で抜群にうまい。そのまま食べてもいいけれど、茹でたトマ〔草原に生える植物の地下茎でほんのり甘い〕と、溶かしバター、砂糖をかけていただくと最高だ。
 ドルマさんは今でこそ、呼ばれたときだけ出張して作るようになったが、かつて茶碗入りヨーグルトを委託販売していたことがある。町に出てきたばかりのころ、ふとした思いつきで小さな茶碗にタネを注いでヨーグルトを作った彼女は、町の小売店に売ってくれないかと頼んだ。当時町では一人分ずつに小分けしたヨーグルトなど売っていなかったので、新鮮にうつったようで、口コミで評判になり、少し高めの価格設定にもかかわらずよく売れて大忙しだったそうだ。プラスチック製のカップを導入するとさらに人気を博した。今では彼女にならってヨーグルトを売る女性が増え、町の定番商品となっている。
 普段控えめなドルマさんだが、この話をしてくれたときはきらきらと目を輝かせていて、とっても素敵だった。見事な手仕事でたくさんの人を幸せにしてきたドルマさんの人生に幸あれ。
フィールドへの主な行き方:
中国国際航空や中国東方航空を利用して青海省の省都西寧へ飛び、そこから車で現地入りする。西寧のバスターミナルからバスを利用して各地へ移動することもできる。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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小森真樹(ミュージアム研究、FENICS13巻執筆者)
Quay Brothers (dir), Through the Weeping Glass: On the Consolations of Life Everlasting – Limbos & Afterbreezes in the Mütter Museum (31mins. 2011. USA.)
ガラスの軋みが、永遠の命を吹き込んでいく−−−タイトルに示唆されているように、そんな詩的な言葉が似合う映像が織りなす31分のまどろみ。映画の舞台は、医学標本の共有のためにアメリカ合衆国フィラデルフィアに創設されたムター博物館。全米初の正統な医学博物館であり、ミュージアム研究を行う筆者のフィールドである。モーションストップアニメーションの雄クウェイ・ブラザーズの手によるドキュメンタリーフィルムは、医療器具、献体、医学書を画面上で動かすことで、黎明期のアメリカ医学のコレクションに耽美な生を与える。彼の地は長らく、工業都市としての誇りを持ってその名を轟かせていたが、1976年のアメリカ合衆国二百年祭を契機に旧都の観光都市として大々的な「再生」を図る。同時に、ムター博物館もまた、そのコレクションを一般に公開し始め、今では“風変わりな”博物館として絶大な人気を誇る。本作の驚異と好奇の映像美によって新たな生を得た医学コレクションは、アナクロニズムのレンズを通すことで、「再び」美しく輝きはじめたムター博物館の歴史と並走しているようだ。
[COLLECTIONS SHOWED IN THE FILM]
• A Siamese twin, Chang and Eng
• Famous American giant bone, Harry Raymond Eastlack
• Bound-foot (いわゆる中国の「纏足」)
• Some anomaly patients’ photographs
• 136 human skulls, Hyrtl Skull Collection
• Dr. Chevalier Jackson’s collection of swallowed objects
• Surgical instruments (Eg. a scalificator)
• Medical Books with lift-the-flap
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4.フィールドごはん
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ハーロウ
丹羽朋子(文化人類学、13巻編者)
私の調査地である中国の陝西省北部地域(陝北)の女性は、8歳頃から主食の小麦粉料理の生地を捏ねる技の習得に日々励むことになる。
 包子(バオズ)=いわゆる中華まんから餅子(ビンズ)=具入りの分厚いクレープ、麺類や餃子まで豊富なメニューは毎日でも食べ飽きない。中でも大鍋で一気に作られるうどん「ハーロウ」は、結婚式やお葬式、土の家「ヤオトン」の施工時など、手伝いに集まった親類・知人に振る舞われる定番食だ。
 ヤオトンのかまどには巨大な鉄鍋が固定されており、ハーロウはその真上に設置した木組みの麺押し出し装置(ハーロウ機)で作られる。お母さんたちが腰を入れて捏ねあげた生地をハーロウ機の中に投入し、上から大人1人が乗っかると、その重みでむぎゅ~と押し出された麺がぐらぐら煮立った鍋の湯に落ちて次々と茹で上がる。できた麺は洗面器やバケツに入れて前庭に置かれたテーブルの上へ。立ち食いのセルフサービス式でおかわり自由。客人たちは別に用意された醤油ベースの具入りスープをかけて麺を頬張る。
 ある結婚式では「婚礼でハーロウを食べるのは、嫁を縛り逃さないという意味がある」と聞いた。昔は14、5歳で嫁がされ、式当日に新郎と初対面したというから、お嫁さんはさぞ逃げ出したかったに違いない。そんな少女を囲む大人たちの思惑を思って食べるハーロウは、ちょっと切ない味がした。
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5.今後のFENICSイベント
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(1) 5月28日、名古屋の南山大学で開催される文化人類学会研究大会にて、出版間近の12巻『女も男もフィールドへ』にちなんだ分科会が開かれます。ぜひお運びください!!
9:30-11:55 分科会 A(1) 調査者のライフイベントとフィールドワーク人生
椎野若菜、杉田映理、大門碧、菅野美佐子、國弘暁子
(2) FENICSサロン + 2016年度 NPO法人FENICS 総会
  FENICSが法人化して二度目の総会となります。昨年は11月に開きましたが、今年より春期に行なうことにいたしました。
  フィールドワーカーが活きる社会にむけて、活動を支えてください、ともに活動しましょう。コアメンバーだけでは、ルーティン化してしまうので、みなさんからのご提案、ご意見、いただきたいです。
  また腰が重い若者が多くなっているこの頃ですが、皆さんとともにフィールドワークの魅了を伝え後進を育てたいです
  サロンでは、FENICS副代表の澤柿さんが話題提供をしてくれます。地震は、すっかり身近な話題となってきました。
  日時:2016年6月11日(土)14:00~17:00
  場所:むさしの第一ホール ラウンジ(東京学芸大学)
  ・FENICSサロン
 澤柿教伸「ネパールの地震に関する、自然地理学術サイドの緊急対応とドローンの活用等について」
 ・FENICS総会
 2015年度の活動報告
 2016年度の活動予定について
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第1巻
『フィールドに入る』(椎野若菜・白石壮一郎編)
「ウガンダでパフォーマーになる:「調べる」ことと「なる」こと」
(大門碧)
その言葉を愕然としながら私は聞いた。
「こたえることはできない。このレストランのことに関しては、いっさいこたえない」
学び始めていた現地の言葉ではなく、英語ではっきりといわれた。日本人学生がわざわざアフリカにやってきて、大衆の集まる盛り場で行なわれているパフォーマンスについて調べているのは信じられない、と思われたのかもしれない。はっきりと敵意をみせられた気がして、私は当惑した。問いかけ方が悪かったのかと思い、再度話しかけようとしても、それは無駄だとばかり、同じ言葉を繰り返して、私から離れようとするレストランの女主人。ではパフォーマーたちに話を聞いていいかとすがると、「彼らと一緒にいることはかまわない、ただあなたがパフォーマンスするとしたら、私はどう報酬を支払えばいいのかしら?」とニヤッと笑った。え、いや、私は勉強に来ているだけだからお金はいらない、などと答えているときには、女主人との会話は終わっていた。
 ……
(1巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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12巻、13巻にご執筆の久世濃子さんの活動のお知らせです。
筑波と長野です、ぜひお運びください!
●日本熱帯生態学会公開シンポジウム
変わりゆく熱帯で暮らす— 人と動物たち
2016年6月19日(日) 13:30-16:30
筑波大学筑波キャンパス総合研究棟A
主催:日本熱帯生態学会
参加費無料、事前申し込み不要
久世濃子 「森の人 オランウータンの生活」
竹内やよい 「ボルネオ先住民の森と生き物たち」
中島啓裕 「アフリカの熱帯林の自然史―森・動物・人の関わり」
池谷和信 「熱帯におけるイノシシ類と人-3大陸の比較から-」
問い合わせ:第26回日本熱帯生態学会大会実行委員会
電話:029-829-8224 (森林総合研究所森林植生研究領域 藤間剛)
●国際助産師の日 イベント
SANBAフェスティバル2016 ~家族と地域でつながる いいお産と楽しい子育て~
H28年6月5日
長野市東部文化ホール・柳原総合市民センター
13:15~
講演会 「サルの子育て、ヒトの子育てー魅力たっぷりサル的子育て」
久世濃子
イベント、出版物等、ご活動をお教えください!
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メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/