FENICS メルマガ Vol.20 2016/3/25

1.今月のFENICS
3月も一週間をきりました。新年度をまえに、大学、職場を卒業する方、新しい居場所に移る方、多くおられることと思います。
新しい人生のステップをふむとは、まさにフィールドが変わるようなもの。ぜひ、あたらしい環境を楽しみつつ歩みをつづけていただきたいです。
『古今東西フィールドノート』13巻は、ちょっと予定がのびましたが、4月にはでます!お楽しみに!!

それでは本号の目次です。

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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(倉田薫子)
3.フィールドワーカーのおすすめ(阿部幹雄)
4.フィールドごはん(牛山美穂)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動

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2.私のフィールドワーク
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ガラパゴス諸島
倉田薫子(13巻『フィールドノート古今東西』分担執筆者)
赤道直下の島国、といえばどのような環境を想像するだろうか。蒸し暑く、60mを越える樹木が林立する熱帯雨林、という答えが一般的だろう。しかしここガラパゴス諸島はそんな予想をまるで裏切られる場所である。9月、私がそこへ降り立った時に見た光景は、枯れ果てたイネ科植物の草原にポツポツとサボテンが立っている、茶色の世界だった。植物学者として「ここに私の仕事はない」という絶望感が私を襲った。

ガラパゴス諸島は赤道直下であるにもかかわらず、南極からの寒流の影響で海水温が低く、ペンギンさえ住める場所である。そのため蒸発量が少なく、降雨も少ない。それが枯れ果てた風景の原因であった。また、大陸と一度もつながった事のない「海洋島」であるがゆえに生物の移入が著しく困難で、大型の樹木の種子がはいってこられなかった。そのためガラパゴスで森林を作っているのは、固有種である木本化したキク科植物スカレシアである。乾燥をはじめとする自然環境の過酷さと海洋島であるという地誌的背景、この2つの要因が、世界で2つとないガラパゴス諸島の生物相を形造っている。

世界自然遺産であり、面積の97%が国立公園であるガラパゴス諸島において研究を行うということは、困難を極めた。そもそも特別法によって3か月以上の滞在が認められない場所であり、ダーウィン研究所に所属する限られた研究者のみが研究を許可される。したがって情報も限られ、その多くはスペイン語で記されていた。日本人で1年の長きにわたりガラパゴス諸島での研究を遂行したのは、今のところ私だけである。

kurata写真

フィールドワークを行う際には、多くの手続きが必要だ。ダーウィン研究所と国立公園の間を書類が何往復もし、フィールドトリップの許可、サンプル採取の許可、サンプルの島間移動の許可(生物が島ごとに固有化しているため)の3点セットを取る。次に移動手段(船をチャーター)を確保し、助手(学生の教育のため、ボランティア学生を1名と無人島の道案内のための国立公園ワーカー1名)を雇用する。さらに出発前には荷物に種子や菌類、昆虫などが紛れていないように念入りな検疫と燻蒸を行って、ようやく出航できる。近い島であればスピードボートで2時間ほど。しかし強い寒流に逆らって船を走らせると、波にもまれて一瞬にして船酔いする。着くころにはフィールドワークどころではないこともしばしばである。そして上陸すると、今度は灼熱の溶岩台地と照りつける太陽が待っている。靴底は熱された鋭い溶岩で溶け、輻射熱で熱射病寸前の身体には頭から水を浴びて熱を下げる。こんな環境に植物があるのか?と意識も朦朧としながら歩き続けること1時間…標高が上がってようやく植生が現れる。木陰に入ると、樹上からガラパゴスの生態系の長であるガラパゴスノスリがこちらを窺っていた。どんなに下調べを入念に行っていても、お目当ての植物はあるときはあるし、ないこともしばしば、運次第である。

ガラパゴスへの主な行き方:
成田からデルタ航空でアトランタ経由キト(エクアドルの首都)で1泊し、そこから国内線で2時間、ガラパゴスの空の玄関口バルトラ空港へ。
フィールドワークやガラパゴスでの暮らしについては、ブログ「ガラパゴスだより」http://galapagosresearch.blogspot.jp/を参照ください。

 

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3.フィールドワーカーのおすすめ
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南極へ持って行く本
阿部幹雄(11巻執筆分担/写真家・ビデオジャーナリスト、第49,50,51次南極観測隊員)

南極観測隊地学調査隊のフィールドアシスタントとして3年連続、毎年、3ヶ月間、山岳地帯でテントで暮らした。日本と南極を飛行機で往復、基地に滞在せず、移動はスノーモービルと徒歩。私は3年間で6200km南極大陸を走った。白夜の夏だけれど最低気温は氷点下30℃以下、風速30m/秒を超えるブリザードが吹きすさび、テントのポールは折れに折れた。私たちは孤立無援だった。

私は毎年、3冊の本を携えて南極へ赴いた。1910年に英国南極観測隊に参加し、南極点に到達したけれど帰路、全員が死亡したスコット隊の記録であるチェリーガラードの「世界最悪の旅」。アルフレッド・ランシングが描いた1914年南極大陸横断に挑戦し、氷海に閉じ込められて船を失い、17ヶ月間漂流。ひとりの死者を出すことなく全員を生還させた探検家シャクルトンの「エンデュアランス号漂流」。100年前の探検家たちの南極での苦闘を読めば、今、私が置かれている状況など楽な世界だとしか思えなかった。
私の任務は、ひとりも怪我をさせず、ひとりも失わないで帰国すすることだった。南極で、探険に挑戦した男たちの勇気と強固な意志に感銘を覚え、命を守り抜いたリーダーの姿と自分を比べ、南極で生き抜く勇気を奮い立たせた。

もう一冊は、私が尊敬し、生きる手本としている新渡戸稲造が書いた「武士道」だ。「Boys, be ambitious」の言葉を残した札幌農学校初代校長クラーク博士の教え子が書いた「武士道」は、人間としていかに生きるべきかを教えてくれる。どんな過酷であろうとも私は「侍」、武士道の世界に生きたいと思う。
3度目の南極からの帰国は、砕氷艦「しらせ」に乗った。友人Tが、「昭和基地図書室に残すはずの本を置き忘れた」という。星野道夫の「旅する木」という本だ。裏表紙に「この本に旅をさせて下さい」と書かれ、「木」に横棒が加えられ「本」となっていた。つまり、「旅する本」だ。私はTからその本を譲り受け、グリーンランドへ旅をした。そして、北極点を目指す若者にその本を託し、こう言った。「この本に次の旅をさせたい。北極点まで連れて行き、私に返して欲しい」と。私の友人は、北極点を目指す旅で氷海に落ち命を失った。北極点を目指せ。そして、生きて還れ。私の若者への励ましだ。「旅する本(木)」は、新しい旅人に引き継がれたのだった。

<参考情報>
「世界最悪の旅」(中公文庫)
http://www.chuko.co.jp/bunko/2002/12/204143.html
「エンデュアランス号漂流記」(中公文庫)
http://www.chuko.co.jp/bunko/2003/06/204225.html
「現代語訳 武士道」(ちくま新書)
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480065650/
「旅する木」(文春文庫)
http://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167515027

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4.フィールドごはん
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牛山美穂(文化人類学)

私がロンドンに滞在していた時によく食べていたのが、マーマイト(marmite)である。これは、茶色く丸いプラスチックの瓶に詰められた、茶色くどろっとしたペースト状のものである。味はかなりしょっぱくて、食べた後に苦みが残る。食べただけでは一体何からできているのかわからない。調べたところ、これはビールの醸造過程で残るビール酵母を原料に作られる食品だということである。さすがイギリス、パブとビールの国ならではの食べ物である。
これをどうやって食べるかというと、私はイギリス人の大家さんの真似をして、チーズトーストのうえに軽く塗って食べていた。程よく塩気と臭みとコクが加わって、チーズトーストが少しパンチの効いた味に変わる。
マーマイトはかなり癖のある匂いと味であるため、好きな人と嫌いな人にはっきりと分かれる。私の夫(イギリス人)は、昔マーマイトみたいだと言われていたらしい。好かれる人にはすごく好かれるし、嫌われる人にはすごく嫌われる、ということである。マーマイトの広告で、「大好きか、大嫌いか(love it or hate it)」というスローガンがある。これが影響して、人によって評価が真っ二つに分かれるようなものの喩えとしてマーマイトが使われるということである。

牛山ごはん写真
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5.今後のFENICSイベント
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FENICS総会は6月11日(土)@東京です!!

来月から新年度。FENICSも、NPO法人化して、二度目の新年度をむかえることになります。
活動をフィールドワーカーのための、フィールドワークを楽しみたい、仕事に、人生に活かしたい人のための活動にするため、FENICSに賛同くださる方々と話し合い、次なる活動を展開したいと思っています。ぜひともご都合をつけていらしてください。
会って話す、というLIVEは情報を、インスパイアを得るにもフィールドワークでもっとも重要なこと。おめにかかれることを、楽しみにしています。
詳細は、また後日お知らせいたします。日程のお知らせまで!
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第5巻
『災害フィールドワーク論』(編)
「参与と観察の自治体災害対応」
(田中聡)

なぜ防災研究者は自治体の災害対応現場に入って、なかで観察してこなかったのか。当時は行政の災害対応している緊迫した現場に入れてもらうことは難しい、あるいは、かえって現場を混乱させるのでやってはいけない、と考えていたのではないかと思う。
本章で紹介する事例は、2004年10月23日に発生した新潟県中越地震において中心的な被災自治体の一つである小千谷市役所において、建物被害調査という市役所の際が対応業務を支援しながら、その対応現場を観察した記録である。……
(5巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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(1)15巻編者 川瀬慈さん主催のイベントです。直前となりますが、あす3月26日京都にて。
『文化人類学者が語り演じるアフリカン・ポップス!』
(京都 3/26)

http://www.itsushikawase.com/japanese/pdf/african_pops_kyoto_160218.pdf

(2)13巻『フィールドノート古今東西』へ分担執筆の増野亜子さんの編集の本がでました!ぜひとも!

「私はこの学問を知ったことで自分の人生が俄然面白くなった。だからこれからこの学問に出会う人に、同じ面白さをできるだけ届けたいと思ってこの本を作りました。」(by 増野亜子さん)

『民族音楽学12の視点』
徳丸 吉彦 (監修), 増野 亜子(編集)

発行音楽之友社
A5判 192頁
定価2,500円+税
ISBN978-4-276-13510-9 C1073
書店発売日 2016年3月25日
http://www.hanmoto.com/bd/isbn/978427613
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
http://www.fenics.jpn.org/modules/query/query.html
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/

寄稿者の紹介

進化生物学 at 横浜国立大学

写真家・ビデオジャーナリスト

11巻「衣食住からの発見」執筆分担

第49,50,51次南極観測隊員


文化人類学 at 早稲田大学 |

(文化人類学)