FENICS メルマガ Vol.2 2014/09/25

1.今月のFENICS
FENICSメルマガ第2号をお届けします。
今回は「100万人のフィールドワーカーシリーズ」著者より
11巻の執筆者の遠藤さんと砂野さんにコラムを書いていただきました。
どちらも11巻『衣食住からの発見』のおふたりのフィールド話を読むと
よりいっそう楽しめる内容となっておりますので、
ぜひ11巻も合わせてご覧いただければと思います。
(http://www.kokon.co.jp/book/b178418.html)
それでは本号の目次です。

—————–
1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(遠藤聡子)
3.フィールドワークで聴く音楽(砂野唯)
4.フィールドごはん(小西公大)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
—————–

~~~~~~~~~~~~~
2.私のフィールドワーク
~~~~~~~~~~~~~
西アフリカ都市の衣服生産(遠藤聡子)

西アフリカで、「パーニュ」と呼ばれる色鮮やかで絵柄が大胆なプリント生地を用いた衣服が、日常的に着られている。人びとは気に入ったパーニュを買い、仕立屋で衣服をあつらえ身につける。女性の衣服に着目すると、上着とスカート(または腰から巻く布)で全身を飾るデザインが多く、独特で美しい。
私は、この衣服の歴史、生産と着用を明らかにすることを通じて、地域の人びとやその文化、社会を理解したいという思いで、ブルキナファソ第二の都市、ボボジュラソに合計2年半暮らした。それまでアフリカと縁なく暮らしてきた私にとって、パーニュも、仕立てた服のデザインも、初めて見る珍しいものであった。そして、衣服が個々にオーダーメイドされているということも、大変興味を引いた。
ボボジュラソ市内では、親方と徒弟2~3人という仕立屋の店が、あちこちで営業している。店内に入ると、入り口近くの部屋(または空間)は応接スペースで、デザイン選びのための写真が置いてあり、仕上がって引取りを待つ衣服が壁にかかっている。奥の部屋(空間)では、首からメジャーを下げた親方が、木製の台の上に布を広げ、チョークで印をつけながら大胆に裁断している。縫製を担当する徒弟たちは、ぐいぐいとミシンのペダルを踏んでいる。
女性客がやってくると、店内は一気に活気づく。持ってきた布を親方に見せながら、希望のデザインを説明する。仕上がった服を試着して、喜んで店内を跳ね回る。欲しかったのはこのデザインじゃない、と親方の胸ぐらをつかんで泣き出す。まだ仕上がっていないなら、終わるまで帰らない、と、店内で待ち続ける。
オーダーメイドされる衣服は、女性のおしゃれ心と仕立屋の技、その時々の流行、各年代の女性としてあるべき姿など、多様な要素が絡み合い、無数と思えるほどのデザインが実現される。私も観察しながら暮らすうちに、女性をその衣服から、どんな人なのか想像がつくようになってきた。そして私も、自分にふさわしいと思うデザインの服を身につけるようになった。
仕立屋の親方と客の真剣勝負、そこから創り出される無数のデザイン、そしてその無数のデザインに身を包む女性たちに、私は2年半を通じて魅了され続けた。このような一点ごとの衣服生産が、今後もずっと存続するのか(してほしいが)、わからないが、友人の仕立屋の仕事や女性たちの服装の変化を、社会の変化とともに今後も追いかけていきたい。今仕事のため暮らしているコートジボワールでも、私は買ったパーニュを前に、誰に頼もうか、どんなデザインの服を注文しようか、想像をめぐらせている。

フィールドへの行き方:飛行機でブルキナファソの首都ワガドゥグへ。エールフランスかトルコ航空なら乗り継ぎは1度で済みます。ワガドゥグからボボジュラソはバスで5時間程度。バス会社はTCVがおすすめ。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3.フィールドで聴く音楽
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(Shakira “Waka Waka (This Time for Africa)”

(砂野唯)

私は半乾燥地に位置するエチオピア農村において、モロコシという穀物の栽培と貯蔵、消費について調査している。私は、調査の都合上、乾期に村を訪れることが多い。乾期には結婚式を挙げる人びとが多く、滞在している間に3~4回も結婚式に参加することになる。結婚式の招待客たちは、歌や踊りを披露して新婚夫婦を祝う。
私も歌や踊りを披露するように要求されるが、私にとって人前で歌い踊ることは苦痛以外の何物でもないうえに、音痴な上にリズム感もない私が歌うと場が白けてしまう。しかし、何もせずに逃げるのは周りが許してくれない。
そこで、私は結婚式への対策として、渡航する前にみんなで踊れるようなノリの良い曲を1曲ダウンロードし、移動中にその曲を必死で覚えていくようになった。アフリカに行くまで、ここまで必死に歌を覚えようとしたことはなかった。そして、結婚式に呼ばれると、その曲を大音量で流して大げさに身振り手振りを付けて歌うことで、その場を何とか乗り切っている。どうやら、調査地の若者たちはShakiraやKaty Perryを好むようで、とくに2010年に開催されたワールドカップの応援ソングであるshakiraのwaka waka(http://youtu.be/pRpeEdMmmQ0)は、軽快なリズムと曲中に何度かアフリカという単語が出てくるところがウケたようで評判が良かった。

~~~~~~~~~~~
4.フィールドごはん
~~~~~~~~~~~
グンタン
(小西公大)

長期フィールドワーク中の食事に関して記憶の糸を手繰っていくと、あまりいい思い出がないことがわかってくる。当時(もう10年も昔の話だ)は、その日暮らしの貧困世帯を渡り歩き、なけなしの食材でもてなしてくれた人びとの、気持ちのこもった、しかし極めて簡素な食事を共にする日々で、慢性的な体重減に悩まされていたのを思い出す。
調査地であるインド北西部のタール沙漠エリアでは、野菜を外部からの輸入に頼らざるを得ず、価格も高い。現地でとれるのはヒエやモロコシなど雑穀ばかり。調査対象となるトライブ(少数民族)の人びとは概して貧しく、ヒエでつくったパン(チャパーティー)に唐辛子や塩を塗って食べることで空腹を癒すことが多かった。
唯一救いだったのが、時々子どもたちが捕まえてくる大トカゲ(トゲオアガマ属、現地語ではグンタン)の存在だ。50センチ近く成長することもあるこのトカゲは、牛の糞で火をおこすカマドに直接投じられる。黒こげにしたものを直にかじりつく。ササミのような微かな肉の味に、心底うれしくなったのを覚えている。調査世帯に少し経済的余裕がでてきてからは、このトカゲを複数のスパイスとともに煮込んだものを食べるようになった。このトカゲの本当の魅力は、その出汁にあったのだ。辛味に負けないしっかりとした下味。ニンニクの臭みとも相性の良い肉汁。今でも変わらず好きな「フィールドごはん」の一つである。

guntan

 

~~~~~~~~~~~~~~~~
5.今後のFENICSイベント
~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)『災害フィールドワーク論』出版記念イベント
このたび100万人のフィールドワーカーシリーズ第5巻『災害フィールドワーク論』が刊行されました。本書は、このシリーズの他の巻とやや趣を異にし、災害というひとつのテーマに焦点を当てたものです。今後ますます重要な社会的課題となるだろう災害に対しては、狭い学問領域にとどまらず、問題に合わせて多様なアプローチを組み合わせていくことが必要になるはずです。そのため本書では、人文社会系・理学系・工学系の研究者が集まり、それぞれのフィールドワークのアプローチと、自身の失敗や驚きも含めた試行錯誤の経験を共有することを目指しました。そして実際にやってみて、そこで見えてきた章(つまり専門分野)を越えて共通する問題意識や取り組み方、あるいは差異は、編者にとっても新鮮な発見でした。そのため今回、本書の出版を記念し、執筆者が集まり、実際に顔を合わせてクロストークする会を企画しました。本書を読まれた方もそうでない方も、ご関心のある方はどうぞお越しください。

日時 10月12日(日) 13:30-16:00ごろ
場所 首都大学東京秋葉原キャンパス(ダイビル12階)C会議室
http://www.tmu.ac.jp/university/campus_guide/access.html
登壇予定者 木村周平、杉戸信彦、柄谷由香、饗庭伸、大矢根淳、山本博之

(2)FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ出版記念会
「現場の知(フィールドの知)をつなごう」

日時:2014年11月1日(土)13:30開始(13:15開場)、16:00終了
(閉会後、近くで親睦会を開く予定です)
場所:清澄庭園 大正記念館(東京都江東区)
http://teien.tokyo-park.or.jp/contents/index033.html
都営大江戸線・東京メトロ半蔵門線「清澄白河」(E14・Z11)駅下車 徒歩3分
会費:1500円

**プログラムの予定**(登壇者はまだお楽しみ)
1部 フィールドワーク――学際・協働
フィールド写真スライドショー・交流の時間
2部 映像――記録・表現・発信

私たちの団体の活動と「100万人のフィールドワーカーシリーズ」の全体を紹介するとともに
メンバーの交流を図る機会を企画しております。
詳細については後日お知らせいたします。
ぜひみなさま万障お繰り合わせの上、ご参加いただきますようお願い申し上げます。

~~~~~~~~~~~~~~
6.チラ見せ!FENICS
~~~~~~~~~~~~~~
百万人のフィールドワーカーシリーズ11巻
『衣食住からの発見』(佐藤靖明・村尾るみこ編)

「神出鬼没のチンパンジーを追って-予定の立たない森での生活」
(藤本麻里子)

フォー フォー フォー フォァーーー
ドン ドン ドン ドン
あ、また来たのか…。今日こそゆっくり朝寝坊しようと思っていたのに…。研究キャンプのベッドのなかで、私はつい一人ごちた。連日の森歩きで疲れた身体を、やっとのことでベッドから引きずり出す。部屋を出ると、研究キャンプのすぐ目の前でチンパンジー立ちがゆったりと寛いでいる。パントフートとよばれる遠くの仲間とコミュニケーションするための鳴き声を大音量で発しながら、さらに地面を足でどんどん蹴って音を出す。研究者が寝泊まりするキャンプに、観察対象であるMグループのチンパンジーが訪問してきたのだ。冒頭はその訪問者の鳴き声と足踏みの音である。チンパンジーのほうから研究キャンプに来てくれる。これは一見とてもラッキーで嬉しい出来事のようにみえるだろう。しかし、そうとばかりも言えないのだ。……

(11巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)

~~~~~~~~~~~~~~
7.FENICS会員の活動
~~~~~~~~~~~~~~
出版まぢかの15巻(『フィールド映像術』)の執筆者でおられる藤田さん。
7月に自著を出版されました。ご自身から紹介文をいただきました。

『洋上のキャンパス おしょろ丸』
藤田良治・湯浅万紀子著(中西出版・1500円+税・2014年7月)
http://nakanishi-shuppan.co.jp/reki/89115-297-0.html
1909年竣工の初代「忍路丸」から、一世紀以上にわたって北海道大学水産学部の教育・研究を支えてきた「洋上のキャンパス」を豊富な写真と ともに解説。地球温暖化のメカニズムを解明する目的で他分野の研究者を乗せ北極海を目指した60日間にわたる長期航海や洋上教育として北海道 大学以外の高等教育機関がおしょろ丸を利用し小笠原へ向かう航海など船内で行われている活動が本誌で再現されています。スマートフォンやタブ レット端末で、ARアプリを使って映像を見て楽しむこともできます。11月1日のENICS 100万人のField Workerシリーズ出版記念会では、会場にて本誌を販売予定です。

11月1日にご本人も会えますのでお楽しみに!

———————————
お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
http://www.fenics.jpn.org/modules/query/query.html
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/