FENICS メルマガ Vol.14 2015/9/25
1.今月のFENICS
いよいよ大学は新学期が始まった頃でしょうか。今年ははやく秋がやってきた気がします。
心地いい気候を楽しみたいものです。
さて、いよいよ11月1日の総会+FENICS EVENTの内容が決まりつつあります。いまから、皆様とお会いするのを楽しみにしております!
それでは本号の目次です。
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1.今月のFENICS
2.私のフィールドワーク(林能成)
3.フィールドワーカーのおすすめ(松本篤)
4.フィールドごはん(梶丸岳)
5.今後のFENICSイベント
6.チラ見せ!FENICS
7.FENICS会員の活動
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2.私のフィールドワーク
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林能成(FENICS5巻『災害フィールドワーク論』分担執筆者)
私には文化人類学者へのあこがれがある。国立民族学博物館友の会には大学院生時代の1990年代から入会していた。当時はインターネット普及前だったので、世界の僻地のことを見聞きする機会は今よりもずっと少なかった。それゆえ季刊民族学で取り上げられる人々の暮らしや自然環境はとても新鮮だった。そして、フィールドに住み込み、現地の言葉をしゃべり、生活をともにして調査を進める研究者の姿はとても魅力的だった。それに比べると、自分自身の調査はフィールドにいる時間も短ければ人間関係も希薄で、ここで紹介するのはちょっと恥ずかしい。
私は地球科学(地震学)の研究で学位をとり、今はそれを防災に活かす仕事をしている。防災研究は「災害時に人が生き残る」という明確な目標があるので、それに沿って調査を計画する。Fenicsシリーズ「災害フィールドワーク論」で書いたインドネシア・バンダアチェにおける調査もそうであった。
20万人以上の方が亡くなった2004年スマトラ島沖の巨大地震のあと、ぎりぎりのところで生き残った人の劇的な話が新聞やテレビで伝えられていた。しかし余裕をもって逃げきった人の話は日本では聞くチャンスがなかった。
劇的な体験談の多くは運の要素が強く、その経験を一般化して応用するのは難しい。一方、語ってくれた本人が「私の体験は地味でつまらないですよ」というような場合にこそ、生き残る必然性があるストーリーが多い。地震・津波に遭遇した土地の状況や、その時の人々の反応といった関連する情報を一緒に集めると、避難状況は極めて鮮明になってくる。関連する隠れた情報を見つけ、丁寧に集めることが、災害フィールドワークで重要なことであろう。
また、災害の瞬間や直後の状況を聞くときには、地震や津波といった自然現象についての知識が思いのほか役に立つ。こういう調査の場に居る理系出身の人間は少数なので、思わぬ話を引き出せる場合があるのかもしれない。
ところで、文化人類学のフィールド研究で見かける地名は、地球科学で注目される地殻活動の激しいフィールドと重なることが多いと思う。地域固有の文化をはぐくみ保存する役目を、激しい地殻活動が担っているのかもしれない。
今年の夏は台湾に滞在し、東海岸で行われた水準測量の調査に参加する機会を得た。この場所は世界でも珍しい場所で、毎年数cmという速さでズルズルと地面が上下方向にずれている。1980年頃に作られた鉄道橋がわずか20年ほどで肉眼でもわかるほど上下に食い違ってしまい、2007年にルートを変えて新線がつくられた。
この付近は少数民族の居住地域でもある。装飾された小学校のたたずまい、集落の中心にある活動センター、大きな教会などが目をひく。台湾の東海岸も文化人類学と地球科学のフィールドが重なる場所の1つだと感じた。
【バンダアチェ(インドネシア・スマトラ島)】
2004年の震災後、アチェ州の独立運動が事実上終結したことや、東南アジアでLCCが大発展したために訪問しやすくなっている。ジャカルタ、メダンからの国内線以外に、クアラルンプール、ペナンからの国際線もある。市内には津波災害を伝える震災遺構も多く残されている。
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3.フィールドワーカーのおすすめ
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松本篤(15巻『フィールド映像術』分担執筆者)
金子光晴『絶望の精神史』講談社文芸文庫(1996)
 ものの見方がガラリと変わってしまう、そんな劇的な瞬間は、二通りのルートからやってくると思う。一つは、遠くにあるものを自らにたぐり寄せた時。もう一つは、近くにあるものを遠くに放り投げた時。かりに前者を「同化」、後者を「異化」と呼んでみよう。
 「いまこそ、絶望のありかを、すみずみまでしらべて、知っておく必要がある(p.21)」「僕は、ついに、自分をエトランゼという名でよぶことにした(p.107)」。詩人・金子光晴は自らを「日本人でありながら(p.107)」“外国からの旅行者”と名付け、身の回りの「絶望する日本人(p.11)」について記していった。明治・大正・昭和という時代の変移を経験して彼が手に入れたのは、この“異邦人になる”という「異化」の技法だった。
 どこかに存在する他者の文化や社会ではなく、自分の生きる場所や生き方を研究の対象にするとき、彼の「異化」の技法はとても示唆に富む。当事者であり、かつ観察者であること。“いってきます”と“ただいま”が反転すること。日常が非日常化すること。本書は、身近なものをフィールドにすることの驚きや発見に満ち溢れている
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4.フィールドごはん
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ラオスの朝食(梶丸岳 2巻『フィールドの見方』編者)
日本人は本当に食べ物好きである。私はもともとあまり食事に関心がなかった人間なのだが、調査を終えて帰ってくると必ず食べ物のことを聞かれるので、そのうち調べざるを得なくなってきた。そして調べているうちにだんだん自分も面白くなってきて、気がついたら研究と関係がないのにやたら食べ物の写真を撮るようになってしまった。今回ご紹介するのはそのひとつである。
ラオスと言えば餅米(カオニャオ)。朝から居候先のお母さんが蒸していて、朝食は蒸したてが食べられる。この写真を撮った日のおかずはタケノコと鶏肉、そして菜の花の和え物である。たけのこは私が調査していたラオス北部フアパン県の名産で毎日のように出てくる。和え物は軽くゆがいた後に少し水を切って調味料を混ぜこみ、最後にパクチーを加えたもの。写真左上にあるのはパデークと呼ばれる小魚の発酵食品をベースにして作ったチェーオ(調味料)である。色は悪いし独特の臭みもあるがそれがいい。餅米を手でつまんでしばらくこねてから具材をつまみ、チェーオをつけて食べる。全体的にバランスが取れていて、しかも美味しい。
気がつけば、最後にラオスに行ってからもう2年が経とうとしている。そろそろカオニャオが恋しい。
ラオス北部農村のある朝食

ラオス北部農村で、ある日の朝食

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5.今後のFENICSイベント
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11月にかけてのイベント、まずは2件のお知らせです。ふるってご参加いただきますよう、スケジュール調整をお願いいたします!
(1)10月23日~11月15日 展示 「JAPONDER2015 アフリカと結婚」展示 @世田谷文化生活情報センター 生活工房
     11月14日  料理ワークショップ「バナナなウガンダ! 新婚さんのお家ごはん」
(2)11月1日 【総会+FENICS EVENT】
 FENICSシリーズにご執筆のみなさま、会員のみなさま全員が集合できることを願った年に一度のイベントです。
今回は、2巻『フィールドの見方』をベースに、みなさまと交流する機会を企画しました。(昨年より、交流の時間を重視します!)
カケラから世界をみる
~魅せられてしまったフィールドの断片とは?~
あなたは何がキッカケでどんな世界(フィールド)に入りましたか?
<お話:予定>
陶器のカケラを道端から水中まで追いかける野上建紀さん
植物と昆虫の世界に取り込まれた奥山雄大さん
音のカケラがつながっている仕組みに魅せられ掛け歌の世界に入った梶丸岳さん
<映像>
映像百科事典「エンサイクロペディア・シネマトグラフィカ:EC」より映像上映
(アフリカ・オセアニアの伝統医療)
<トーク>
駒澤大佐 × 増田研(聞き手) 耳鼻科医がアフリカの島へ調査にいく(仮)
<スライドショー>
FENICSフィールドワーカーによる写真スライドショー
13:00 開場
13:30 ~16:30
ポレポレ坐 東中野
予約 1500円(ワンドリンク付き) 当日 2000円
主催 NPO法人 FENICS
協力 下中財団 ポレポレ東中野
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6.チラ見せ!FENICS
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100万人のフィールドワーカーシリーズ第1巻
『フィールドに入る』(椎野若菜・白石壮一郎編)
「中国・黄土高原に「カメラマン」として住まう-カメラを通して複数の眼をとり込む」
(丹羽朋子)
「中央電子台の記者か?」「日本から来たって?あんたスパイか?」調査地である中国・黄土高原の街場や農村をぶらつく私に、道行く人びとからこんな声がかかる。重たいレンズをつけた一眼レフを首からさげ、左右の肩にはビデオカメラと紐付きのフィールドノートを斜め掛けにしている。上半身を幾重もの紐で縛られたような私の姿は、テレビドラマで暗躍する女スパイには程遠いにしても、観光バスも通らぬこの僻地ではたしかに怪しく見える。
フィールドに入った当初は、彼らの問いかけに真っ向から、「文化人類学の調査」という目的を答えていた。だが「調査」と聞いた途端に、身構える相手との間に見えない壁が現れるように思われて、初対面の人の前ではこの言葉を封印するようになった。今では代わりに、「写真、撮ってもいいですか?」と軽く聞き返すことにしている。……
(1巻のご注文はFENICSホームページhttp://www.fenics.jpn.org/よりログインして、サイト内のオーダーフォームからご注文いただくと、FENICS紹介割引価格でご購入いただけます。ぜひご利用下さい)
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7.FENICS会員の活動
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(1) 会員の松本篤さんから、『フィールド映像術』の巻に書いた取り組みが10月4日に世田谷で実施される旨、ご案内いただきました。
穴アーカイブ [an-archive]
8ミリフィルム鑑賞会 穴からみえる、ひと、くらし、世田谷
市井の人々が記録した、昭和の世田谷。
穴アーカイブ[an-archive]では、昭和30〜50年代にかけて家庭用に普及した「8ミリフィルム」という映像メディアに着目し、その収集に今春から取り組んできました。このたび、皆さまからご提供いただいたフィルムの一部をお披露目いたします
東京五輪開催中の駒沢オリンピック公園、昭和30年代の向ヶ丘遊園、三軒茶屋や玉川線などを上映する予定です。誰かの記録が、ほかの誰かの記憶になる。そんなスクリーンを囲むひとときをお愉しみください。
日時: 2015年10月04日(日)  14:00~15:30
会場: 生活工房ワークショップB(4F)
*入場無料/申込不要/直接会場へ
*当日はデジタル映像を上映予定です。
*鑑賞会後、「せたがやアカカブの会」の入会説明会を実施します(30分程度)。
*詳細は以下のアドレスでご確認ください。
(2)会員の野口淳さんから、本の出版のご案内です。
野口 淳・安倍雅史(編)『イスラームと文化財』
単行本(ソフトカバー): 300ページ
出版社: 新泉社 (2015/10/7)
2700円
シンポ基調講演・報告は考古学、文化遺産学が中心ですが、コメント、ディスカッションに、社会学、文化人類学から文化遺産と地域社会の関係を掘り下げている方にも加わっていただきます。ユネスコ的な「価値」だけでなく、地域のムスリム・コミュニティとも共有可能な文化遺産の認識、受容の可能性を議論したいと考えています。
以上、みなさまからのご連絡をおまちしています。
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お問い合わせ・ご感想などはこちらよりお寄せ下さい。
メルマガ担当 梶丸(編集長)・椎野
FENICSウェブサイト:http://www.fenics.jpn.org/